2017 Fiscal Year Research-status Report
ドーパミン神経系の疼痛制御機構による口腔領域の神経障害性疼痛の緩和
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17K17242
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前川 博治 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (10711012)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ドーパミン受容体 / 神経障害性疼痛 / c-Fos / von Frey filament |
Outline of Annual Research Achievements |
ラットの眼窩下神経を結紮して、神経障害性疼痛のモデル動物を作製した。眼窩下神経の結紮手術を行う前と行った後に、フォンフライ毛を用いて、ラットの鼻毛部に機械刺激を与え、逃避反応を起こす最小の刺激の強さ(閾値)を測定した。神経結紮前と比較して、神経結紮後に閾値が有意に低下している個体を神経障害性疼痛の一つであるアロディニアを発症していると考え、神経障害性疼痛のモデルラットとして以降の実験に使用した(CCI群)。 神経結紮の14日後に、CCI群にドーパミンD2受容体刺激薬quinpiroleあるいは生理食塩水を腹腔内投与(CCI+quin、CCI+saline)し、また神経結紮を除いて同様の手術を行った対照群に生理食塩水を腹腔内投与(sham+saline)し、腹腔内投与を行った20分後に、15gのフォンフライ毛で1Hz、5分間鼻毛部に刺激を与えた。その2時間後に灌流固定した。脳幹の凍結切片を作製し、c-Fosに対する免疫染色を行い、三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)に発現するc-Fos陽性細胞数を計測した。CCI+quinでは、Vcに発現するc-Fos陽性細胞数が、CCI+salineに対して有意に低下した。CCI+quinとsham+salineではc-Fos陽性細胞数に有意差を認めなかった。また、ドーパミンD1受容体刺激薬SKF38393を使用して同様に実験を行ったが、Vcに発現するc-Fos陽性細胞数に有意な変化は認められなかった。 これらの結果から、眼窩下神経を結紮して作製した神経障害性疼痛モデルラットに対して、ドーパミンD2受容体刺激薬を投与すると、機械刺激に対するアロディニアが抑制されることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は以前に、ラットの眼窩下神経を結紮して神経障害性疼痛のモデル動物を作製した経験があった。また、ラットを灌流固定した後、脳幹の凍結切片を作製し、c-Fosに対する免疫染色を行ったが、これらの実験手技にも研究代表者は習熟していた。しかし、研究計画調書に記載した実験方法を一部変更して実験を実施した。研究代表者所属部局の動物実験委員会に実験計画書を提出した際に、一部実験方法についての再考を求められたことがその理由である。当初の実験計画としては、ラットにペントバルビタールで全身麻酔を行い、脳定位固定装置に固定し、線条体に試薬を投与し、機械刺激を与えることで、その試薬が痛覚に及ぼす影響を調べようとした。しかし、動物実験委員会から全身麻酔に使用する薬剤について再考を求められた。そのため、全身麻酔薬を三種混合麻酔薬(ミダゾラム、メデトミジン、ブトルファノール)に変更した。この中には、鎮痛作用を持つブトルファノールが含まれているため、痛覚に影響を与える可能性がある。そのため、当初計画していた条件での実施が困難と考え、薬剤の投与経路を脳内投与から腹腔内投与に変更した。実験方法に一部変更があったが、得られた結果は当初の研究目的にかなったものであるため、おおむね順調に進行したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
眼窩下神経を結紮して作製した神経障害性疼痛モデルラットに、ドーパミンD1、D2受容体拮抗薬を投与して、15gのフォンフライ毛で鼻毛部に1Hz、5分間の刺激を与える。灌流固定したのち、脳幹の凍結切片を作製し、c-Fosに対する免疫染色を行い、三叉神経脊髄路核尾側亜核に発現するc-Fos陽性細胞数を計測する。正常ラットの結果と比較し、ドーパミン神経系の活動と神経障害性疼痛との関係を検討する。
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Causes of Carryover |
研究計画調書には、ラットを1年間に200匹程度使用する計画であると記載したが、研究の進行状況により、使用したラットの数が少なくなったことが理由として挙げられる。また、使用したラットの数が少なかった事に関連して、使用する試薬等の量も当初計画していたものより少なくなったことも理由として挙げられる。 次年度もラットや試薬の購入に直接経費を充てる予定である。また学会参加に伴う旅費等にも充てる予定である。
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Research Products
(1 results)