2017 Fiscal Year Research-status Report
miRNAデリバリーを利用したシェーグレン症候群に対する新たな治療法の探索
Project/Area Number |
17K17244
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
酒井 学 大阪大学, 歯学部附属病院, 技術職員 (50643376)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 唾液腺疾患 / シェーグレンモデルマウス / miRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、シェーグレン症候群(SS)に対する核酸デリバリーシステムを利用した新しい治療法の開発を目的とている。SSは涙腺・唾液腺などの外分泌器官を主な標的臓器として炎症細胞の浸潤が起こり、慢性の炎症や分泌量の低下、乾燥症状を引き起こす全身性の難治性自己免疫疾患であり、他の自己免疫疾患と比べても有効な治療は確立されておらず、対症療法に留まっているのが現状である。そこで本研究では、近年盛んに研究がなされている核酸医薬とドラックデリバリーに着目した。低分子医薬品にかわるシーズとして核酸医薬の研究が盛んになされているが、その中でもmiRNAなどのRNA干渉を応用した技術は疾患の原因となる遺伝子を特異的かつ直接的に攻撃できることから、次世代の医薬品候補としての期待が大きい。そこで今回私達は、以下の2点について検討を行った。 (1)原発性SS特異的モデルマウスを作成し、SSに特異的なmiRNAを網羅的に解析、同定する (2)同定されたmiRNAをデリバリーシステムにより障害部へ導入し、その効果を多角的に解析する 今年度は(1)について重点的に検討を行った。当初計画していた研究実施内容においてはNFS/sldミュータントマウスを使用予定であったが、作成手技の煩雑さの観点から使用マウスを変更し、SS自然発症モデルであるIQIマウス(ヒトSS末期病変と類似したB細胞浸潤が顕著な唾液腺炎病変を形成する(SaegusaとKubota, JVMS, 1997))とした。IQIマウスについて、コントロール群であるICRマウスと比較検討したところ、IQIマウスでは生後4か月から顕著な唾液腺炎病変が観察された。現在、生後12か月のIQIマウスを使用し、SSに関与すると考えられるmiRNAを網羅的に解析、同定している状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた研究実施内容は舌下腺粘液細胞に分化異常をきたすNFS/sldミュータントマウスに生後3日目の胸腺摘出を施すことにより,原発性SSモデルマウスを作成することを目標としていた。しかしながら摘出手技の正確性を向上させるためには多くの時間が必要なこと、および摘出後のフローサイトメトリー手技の煩雑さの観点から使用マウスを変更し、SS自然発症モデルであるIQIマウス(ヒトSS末期病変と類似したB細胞浸潤が顕著な唾液腺炎病変を形成する)とした。IQIマウスについて、コントロール群であるICRマウスと比較検討したところ、IQIマウスでは生後4か月から顕著な唾液腺炎病変が観察された。現在、生後12か月のIQIマウスを使用し、SSに関与すると考えられるmiRNAを網羅的に解析、同定している状況であるが、当初の予定では今年度中に有意なmiRNAを同定している予定であったため、進捗はやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、生後12か月のIQIマウスを使用し、SSに関与すると考えられるmiRNAを網羅的に解析、同定している状況である。有意なmiRNAが同定され次第、障害唾液腺組織から抽出したmiRNAをthe miScriptII Reverse Transcription kitにより逆転写し、得られたcDNAをthe miScript SYBR Green PCR kitによって定量する。これらの結果からSS特異的なmiRNAを同定する。その後は研究実施計画に沿い、SS特異的なmiRNAをアテロコラーゲン(AteloGene® Local Use"Quick Gelation")を利用してSSモデルマウスに導入する検討へと進んでいく。
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Causes of Carryover |
当初計画していた研究実施内容はNFS/sldミュータントマウスから原発性SSモデルマウスを作成することを目標としていた。しかしながら摘出手技の正確性を向上させるためには多くの時間が必要なこと、および摘出後のフローサイトメトリー手技の煩雑さの観点から使用マウスを変更し、SS自然発症モデルであるIQIマウスとした。今年度中にNFS/sldミュータントマウスから有意なmiRNAを同定し、それらの解析へと進んでいる予定であったため次年度の使用額が生じてしまった。翌年度分では当該助成金も使用し、当初から計画していた研究実施内容に沿って助成金の使用を進めていく予定である。
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