2017 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージを標的とした口腔前癌病変の新規治療法・病理診断法の開発
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17K17247
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
重岡 学 神戸大学, 医学研究科, 助教 (20778716)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 口腔前癌病変 / マクロファージ / 病理診断 / 早期発見 / 白板症 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍関連マクロファージ(TAM)を標的とした治療法の開発が注目され、種々のTAM特異的マーカー (CD163, CD204, CD206等)が登場し、口腔癌を含む様々な癌においてTAMの重要性が報告されている。しかしながら、口腔白板症に代表される前癌病変についてマクロファージに着目した検討は少数である。本研究では口腔扁平上皮癌の発癌初期段階におけるマクロファージ/上皮細胞相互作用について臨床検体(病理組織標本)および培養系を用いた解析を行い、分子病態における意義を解明するとともに、より精度の高い病理診断への応用することを目的としたものである。舌白板症切除標本におけるTAM特異的マーカーの免疫組織化学ではCD163陽性マクロファージが主に病変部上皮下に浸潤しており、その数は口腔前癌病変の悪性度に関与するとされる既知の因子に相関した。そこで口腔粘膜上皮細胞に対するCD163陽性マクロファージの影響を検証する目的で、CD163の発現が誘導されたヒト単球性白血病細胞株THP-1由来培養上清を調整し、ヒト口腔ケラチノサイトに作用させると種々の免疫抑制分子の発現が誘導された。また、新規病理診断マーカーとしてマクロファージが有用であるかどうかを検証することを目的に、生検および連続的な切除術が施行された舌白板症標本を用いてCD163陽性マクロファージについて評価したところ、口腔扁平上皮癌まで進展した症例では上皮下のみならず上皮内にまで浸潤が及ぶことが明らかになった。これらの研究成果について学会発表をふまえて、論文化に向けた打ち合わせも進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔前癌病変の病理組織標本を用いた解析については十分量の症例数の収集が完了し、マクロファージの浸潤と悪性度との間に一定の相関関係を得た。さらには、生検および連続的な切除術が施行された舌白板症症例について着目し、CD163陽性マクロファージについて免疫組織化学を用いて評価したところ、口腔扁平上皮癌まで進展した症例では上皮下のみならず上皮内にまで浸潤が及ぶことを明らかにした。培養系を用いた解析に関しては、CD163の発現が誘導されたヒト単球性白血病細胞株THP-1由来培養上清によりヒト口腔ケラチノサイトに複数の免疫抑制因子が誘導されることが見い出された。ただし、培養上清を作用させたヒト口腔ケラチノサイトの腫瘍性格の獲得についての検討が積み残しの研究課題として挙げられる。本課題に関しては次年度以降の研究の進展に繋げていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
口腔扁平上皮癌の発癌初期段階におけるマクロファージ/上皮細胞相互作用について臨床検体および培養系を用いた解析:CD163の発現が誘導されたヒト単球性白血病細胞株THP-1由来培養上清を作用させたヒト口腔ケラチノサイトの腫瘍性格 (増殖能、運動能、浸潤能)の獲得について検討する。さらに培養上清作用後のヒト口腔ケラチノサイトで特異的に発現が変化する遺伝子をcDNAマイクロアレイにて網羅的に解析し、発現が上昇した遺伝子群の中から、上記の腫瘍性格獲得の検証結果との関連が示唆される遺伝子を抽出し、タンパクレベルでの発現誘導も確認する。抽出した分子について病理組織検体を用いて免疫組織化学的に解析し、口腔前癌病変の悪性化との相関を検討することで、同定した分子を標的とする口腔前癌病変の新規の病理組織診断法や治療法の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
(理由)当該年度に実施した実験に加えて、次年度はヒト単球性白血病細胞株THP-1由来培養上清を作用させたヒト口腔ケラチノサイトで発現が誘導される遺伝子群を網羅的に解析し、腫瘍性格獲得との関連が示唆される遺伝子の抽出を予定しているため。 (使用計画)cDNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子解析、抽出した遺伝子(複数)についてタンパクレベルによる発現誘導確認(ウエスタンブロット、ELISA、その他消耗品)、当該分子についての舌白板症例の病理組織標本における発現検討(抗体、標本作成試薬等)
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