2019 Fiscal Year Research-status Report
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体を介した麻酔薬の抗炎症作用の解明
Project/Area Number |
17K17248
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
若杉 優花 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (00749210)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | デクスメデトミジン / PPARγ / 15d-PGJ2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はデクスメデトミジン(DEX)がアラキドン酸代謝の過程で生じる15-デオキシ-△12, 14-PGJ2(15d-PGJ2)を増加させ、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)に作用し、炎症性サイトカインの産生を抑制するという仮説のもと計画している。 2019年度はDEXの抗炎症作用をCOX経路から検証した。まずマウスマクロファージ由来株細胞のRAW264.7を用い、Lipopolysaccharide (LPS) により炎症を惹起し、DEXのPGE2産生、COX-2遺伝子発現への影響について検証した。細胞数を調整し、Control群(培地のみ n=5)、LPS投与群(LPS: 10ng/ml n=5) 、LPS+DEX投与群 (LPS: 10ng/ml、DEX: 3, 10μM各n=5) の4群に分けた。2, 4, 6時間後、ELISAでPGE2の濃度、リアルタイムPCRでCOX-2遺伝子発現を測定した。LPSの投与により、4, 6時間後のPGE2産生量、COX-2発現量が有意に増加した。またLPS+DEX10μM群において、6時間後に有意にPGE2産生量、COX-2発現量が低下した。 そこでリアルタイムPCRを用い、PPARγの遺伝子発現を調べた。細胞数を調整し、Control群(培地のみ n=5)、LPS投与群(LPS: 10ng/ml n=5) 、LPS+DEX投与群 (LPS: 10ng/ml、DEX: 3, 10μM 各n=5) 、DEX投与群(DEX: 10μM n=5)の5群に分けた。6時間後、LPS+DEX10μM群においてPPARγの遺伝子発現量が有意に増加した。なお2017年度にLPS+DEX10μM群において15d-PGJ2の増加を報告している。これらの結果から、DEXの抗炎症作用は15d-PGJ2、PPARγを介する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度末の計画通り、DEXの抗炎症作用についてCOX経路から検証することに取り組んだ。LPSによるPGE2、COX-2の増加はDEXの投与により抑制することを確認できた。また、DEXの投与によりアラキドン酸代謝の過程で生じる15-デオキシ-△12, 14-PGJ2(15d-PGJ2)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)を増加させることを確認できた。DEXの抗炎症作用は15d-PGJ2、PPARγを介する可能性が示唆され、引き続き研究に取り組んでいく。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、LPSによる炎症はDEXを投与することにより抑制されることが確認された。また、DEXの投与により15d-PGJ2およびPPARγの産生増加が確認された。2020年度は、PPARγの拮抗薬を投与することにより、DEXによる抗炎症作用に対してどのような影響を与えるか検討を行う。以上で結果が得られれば、15d-PGJ2の前駆体であるPGD2の発現について検討を行う。あるいは、α2受容体アンタゴニストを投与し、DEXの投与によるPPARγの増加の経路について検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
2017年1月22日から2018年3月31日まで、産前産後休暇および育児休暇を取得したため、当初の研究期間から1年延長した。2020年度はこれまでの結果をさらに検証していくため、各種アンタゴニスト、ELISAキット等の購入に使用する。また、その成果を学会発表するための旅費に使用する。
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