2018 Fiscal Year Research-status Report
唾液/血液中の腫瘍核酸(cfDNAとmiRNA)による数理腫瘍学的な口腔癌診断法
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17K17280
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中村 康大 鹿児島大学, 附属病院, 医員 (90783506)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | microRNA / 腫瘍マーカー / 口腔癌 / 液体生検 / リキッドバイオプシー |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔癌の有用な腫瘍マーカーは未だに報告されていない。また口腔癌の重要な予後因子である頸部リンパ節後発転移に対する予測マーカーも確立されていない。よって口腔癌領域では、診断および治療後のモニタリングに際して有用なバイオマーカーの開発が急務である。microRNAは標的mRNAを分解し翻訳を阻害する機能を有する。多くの悪性腫瘍でその発現異常が報告され、血清中のmicroRNAを利用した診断の試みが報告されている。しかしながら、口腔癌領域においては、microRNAを用いた診断システムは未だ確立されていない。そこで本研究は、「口腔癌のプレシジョンメディシン」を最終的な目標として見据え、口腔癌の検出と再発予測に対して精度の高い分子マーカーとなるマイクロRNAの同定、およびそれらを用いた診断アルゴリズムの構築を目標とする。 口腔癌群(n=40)および対照群の健常者(n=40)から血清を採取し、まずmicroRNAマイクロアレイによる網羅的解析を行い、両群間に発現量の有意な差が認められたmicroRNAを抽出し、次に個々の症例における候補microRNAをリアルタイムPCR法にて定量検討し、口腔癌の診断および予後予測のマーカーとしての有用性を、統計学的に解析する。 口腔癌の非侵襲的検査法は実用化されていない。現状では、確定診断のためには、組織を切除する「生検」しか方法がない(この方法は多くの合併症を有する)。また現状の口腔癌検診は専門家の診察によるものでコストパフォーマンスが低く、大規模検診には不向きである。口腔癌には、大腸癌の便潜血検査や胃癌のバリウム検査などのような、比較的良好な感度と特異度を有する1次検診法が存在しない。よって本研究結果は、口腔癌の新規診断法・新規検診法の技術基盤となる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
miRNAマイクロアレイにより、健常者群に対して癌患者群で2倍以上の発現レベルを示す48種、または1/2以下の発現を示す40種のmiRNAを候補マーカーとして同定し、その中でも特に癌患者と健常者との間で差の大きく、リアルタイムPCRのプローブが利用可能であった右表の15種のmicroRNAを診断の候補バイオマーカーとして選定した。 同定された15種のmicroRNAを用い、口腔癌(n=40)と健常者群(n=40)の血清中の発現量をリアルタイムPCRにて定量検討を行ったところ、6種のmicroRNAが口腔癌診断マーカーとして選出され、それらを用いた計算式による口腔癌診断システムはAUC=0.849、感度=67.5%、特異度=87.5%と比較的良好な診断精度を示した。また、3種のmicroRNAが治療後の後発転移予測マーカーとして抽出され、これらを組み合わせた計算式を作成したところAUCは0.860、感度83.3%、特異度80.0%と高精度に後発リンパ節転移を予測することが可能であった。 本技術研究開発を進めて行く目標として「臨床現場即時検査(POCT)タイプの装置の開発」および「口腔癌腫瘍マーカーとしての保険収載」を見据えている。この目標は上述のNEDOと国立がんセンターのプロジェクトと同一のものである。口腔癌患者数は2016年推定で我が国内に約1.2万人、米国で3.2万人、EUで約5万人と推定されている。米国では半年に一度の口腔がん検診が実質義務化されて大きな成果を上げており、本研究結果は世界的に広範な社会的ニーズを満たす検査法に成長する可能性があるため、2018年10月29日国内特許出願を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロRNAは昨今の医療の潮流である「リキッドバイオプシーによるプレシジョンメディシン」における中心的なバイオマーカーとして期待されており、体外診断薬としての事業化が見込める。他癌においては、巨大な産学連携コンソーシアムが莫大な予算を投じて次々とmicroRNAによる診断法を確立しており、NEDOの「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」でも数多くの癌の超早期発見におけるマイクロRNAの有用性が示され、2017年には国立がんセンターで臨床研究が開始され、2020年には人間ドックのメニューになることが計画されている(このプロジェクトには口腔癌は含まれていない)。このように、マイクロRNAを用いた癌診断は事業化の目前の状態でありその診断能力の高さは広く知られている。よって同様のシステムを口腔癌において構築することは理論上十分に可能であり、実用化・事業化の可能性は高いと考える。 また、本結果に用いたマイクロRNAは治療後の腫瘍再発を鋭敏に予測することから、リキッドバイオプシーに用いる腫瘍マーカーとして理想的であり、今後標準的に行われることが予測される治療後リアルタイムモニタリングに用いるバイオマーカーとしての有用性は極めて高いと思われる。 本研究で得られた口腔癌存在診断の計算式および後発リンパ節転移予測の計算式を用い、既出の口腔癌患者40人、健常者40人以外に新たな口腔癌患者および健常者より血清を採取し、診断精度を確認していく必要がある。
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Causes of Carryover |
理由:物品購入時の消費税による1000円以下の端数の発生の累積により少額の次年度使用が発生した。使用計画:2019年度の消耗品購入にあてる。
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Research Products
(2 results)