2017 Fiscal Year Research-status Report
薬剤関連顎骨壊死治療の多施設共同前向き観察研究と病理組織学的病態解析
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17K17283
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
林田 咲 長崎大学, 病院(歯学系), 助教 (40644050)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 外科的治療 / 傾向スコアマッチング法 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤関連顎骨壊死は悪性腫瘍やそれに付随する骨関連事象、骨粗鬆症の治療を妨げる有害事象である。その病態は未だ解明されておらず、治療法は確立していない。そこで薬剤関連顎骨壊死における臨床的因子を探索するため、多施設共同観察研究を行った。今回は後ろ向き研究を行ったが、統計解析方法の一つに傾向スコアマッチング法を用いることにより、症例の背景因子を可能な限り小さくすることでその欠点に対応した。 研究対象は薬剤関連顎骨壊死と診断され、協力施設の口腔外科で加療した全361例であった。保存的治療は202例、外科的治療は159例であった。全361例で多変量解析(ロジスティック回帰分析)を行ったところ治療成績に関連する因子として、骨吸収抑制薬の種類(high dose vs low dose)、アルブミン値、休薬、治療法(外科 vs 保存)が挙げられた。ここで治療法についてより詳細に検討するため外科的治療と保存的治療の背景因子を単変量解析してみると性別、ステージ、発症契機、骨吸収抑制剤の投与量、投与期間、アルブミン値において有意差をみとめ、背景因子に偏りがあることが分かった。そこで可及的にその偏りをなくすために傾向スコアマッチング法を用いた。マッチング後の症例は、外科的治療88例、保存的治療88例となりすべての項目で有意差はなくなった。この状態で治療法について治療成績(治癒/非治癒)を検討した。結果は、外科的治療が有意に治療成績が良好であった。さらに、外科的治療において壊死骨のみを除去するconservative surgery、壊死骨とその周囲骨を除去するextensive surgeryと区分して術式を検討した結果、extensive surgeryが良好な治療成績を得ていた。この研究結果より薬剤関連顎骨壊死の治療は保存的治療より外科的治療が有効であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前向き研究の参加・協力は難しく、多施設多数例での後ろ向き研究で傾向スコアマッチング法を用いてその代替を考えているため。
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Strategy for Future Research Activity |
薬剤関連顎骨壊死の治療において治療法と並んで大きな議論になっている休薬についても同様に臨床的因子として検討を行っていく。これも多施設共同で検討する。 病理組織学的因子の検討としては、外科的治療時の検体の採取を進めていく。
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Causes of Carryover |
今年度は臨床的因子の検討が主であり、未使用分は次年度の病理組織学的因子の研究における解析や検査に使用予定である。
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