2017 Fiscal Year Research-status Report
水中死体を対象とした歯による死後経過時間推定法の開発
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17K17383
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
石川 昂 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (10772288)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 水中浸漬時間 / 死後経過時間 / 個人識別 / 水中死体 / 溺死体 / エナメル質 / 法歯学 / 法医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
法医学分野における主要業務は、異状死体の死因究明、死後経過時間の推定、身元不明死体の個人識別などである。本研究はこの中でも、死後経過時間の推定が困難な水中死体を対象にした死後経過時間の新たな推定法の開発を目的とする。水中死体に対する死後経過時間の推定には、一般的な死体現象を参考にするほか、死蝋化程度が重要な評価項目になるが、死蝋化進行に伴い情報量は徐々に減少する。水中死体は他の死体と異なり、死亡場所(あるいは入水場所)と発見場所が異なる事が多く、これらの特定には死後経過時間の推定は極めて大切な鑑定項目になる。 本研究では、これまで着目されていなかった外部環境から比較的隔絶されている歯髄内組織における酵素活性の経時的変化とエナメル質表面への水含有物の経時的な付着物の変化を解析する事により、水中死体に対する新しい死後経過時間推定法の開発を目指す。これまでの主な死後経過時間の推定方法は、高度に腐敗あるいは白骨状態になると急激にその能力は失われる。さらに、直腸温度による手法等を除くとそのほとんどは鑑定人の視覚的な判断に大きく影響するため、各鑑定人による鑑定結果に誤差が生じる事も否定出来ない。それに対し本研究では、水中死体に特化した方法の確立を目指しており、酵素活性や歯面へ付着した水含有物の定量的分析という視覚的な判断を排除した分析方法を検討する。この方法を確立する事により、鑑定人による誤差を最小限に抑え、水中浸漬時間推定法の一助になる上、迅速な個人識別につながるものと期待出来る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度においては海水域における水中死体の水中浸漬時間推定法の開発のため実験を行った。水中浸漬時間別に0, 7, 14, 30, 60, 90, 180, 210日の8郡に分類した歯牙のエナメル質表面の付着物をEPMAを用い測定を行った。浸漬時間の延長と共に、海水主要成分であるNa, Cl, Mg, Al, K, S, Si,などの付着物の増加を認めた。それに伴い、エナメル質の主要成分であるCa, Pの測定量は減少した。これらの結果をもとに、水中浸漬時間推定法の開発のため回帰式を算出した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、海水を用いた昨年度と同様の実験手法を用い淡水域で用いることが可能な回帰式を得ることを目的に実験を遂行していく予定である。また当初の予定通り、歯髄組織内から抽出した酵素活性と死後経過時間との関係も併せて検討していく。
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Causes of Carryover |
当初、予定していた採水のための交通費の支出が削減できたため繰越金が生じた。来年度に行う予定である淡水域での実験では採水のための輸送費がかかるものと考えられる。 また、本研究で最終年度に1本のみを予定していた論文投稿を2本に増やす予定のため、それに伴う論文校正費等に支出予定である。
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Research Products
(3 results)