2018 Fiscal Year Research-status Report
失語症患者のためのQOL評価尺度の開発とQOL予測アルゴリズムの作成
Project/Area Number |
17K17432
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
成田 渉 東北大学, 大学病院, 助教 (10535420)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 失語症 / QOL / 脳卒中 |
Outline of Annual Research Achievements |
【経過と成果の概要】失語症患者のQOL予測を目的とした研究で、継続的な調査が行えている。脳卒中後の失語症患者のQOLについていくつかの知見が得られた。 【詳細】失語症は脳損傷後の認知機能障害として比較的よく知られた症状である。片麻痺などの運動障害と同様にリハビリテーションの対象となっている。評価に関して、失語症は運動障害と同様に重症度評価が一般的である。しかし、重症度評価だけでは失語症患者の抱える問題を把握し、適切な介入方法を検討することは難しい。なぜならば、言語は人が社会と関わるために必須の機能であり、失語症が患者の社会的機能や心理状態に深刻な影響を及ばすためである。本研究は重症度評価からは直接把握しにくい失語症患者のQOLを調査し、QOLに影響を与える要因を検討することを目的としている。 2018年度までに回復期リハビリテーション病棟に入院する患者に対し、QOLおよび言語機能の評価が実施できた。QOLはSAQOL-39、言語機能はSLTAで評価した。このうち入院時データの取得が可能だったのは29名、入退院時のデータが取得できたのが18名であった。言語機能は入院中に改善がみられるが、QOLは必ずしもそれに一致した改善がみられるわけではなかった。具体的にはWernicke失語や伝導失語において意思疎通に関するQOLは退院時には入院時よりも低下することが認められた。 多くの場合、リハビリテーションが目標とするのは機能の改善である。しかし、本調査の結果から失語症の種類によっては機能改善によって患者のコミュニケーション上の不便さが解消されているわけではないことが示された。コミュニケーション上の不便さを機能障害によって推し量るのではなく、直接的にQOLで測定する意義および加えて予想されるQOLが失語症の種類によって異なることが、本調査の継続でより明らかになると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は失語症患者のQOLの予測にある。当初の計画としてQOL評価と並行して、現状の尺度よりもより優れた評価尺度を作成することを目的としていた。しかし、失語症の重症度、患者の心理状態などでQOL評価が困難な症例が予想したよりも多く、QOL評価尺度の作成は難しい状況にある。
|
Strategy for Future Research Activity |
進捗状況で述べたように、評価できた症例数が当初の計画よりも少ない。2019年度も同様の結果が予想される。本研究の目的は失語症患者のQOLに影響を与える要因(QOL予測因子)の特定である。評価を確実に行えるように評価を既存の尺度に絞る、退院時評価がもれないような評価体制の改善を図るなどの対策を検討している。
|
Causes of Carryover |
次年度必要額は生じていない。
|