2017 Fiscal Year Research-status Report
神経性やせ症患者の身体感覚の回復に向けた、精神看護ケアガイドライン
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17K17515
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
井上 さや子 高知県立大学, 看護学部, 助教 (30758967)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経性やせ症 / 身体感覚 / 看護ケア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、Step①手記を用いた神経性やせ症患者の身体体験に関する文献検討 Step②①を基盤としたインタビューガイドの作成とプレテストや専門性の高い臨床家との意見交換によるインタビューガイドの洗練化 Step③2名の当事者へのインタビュー(身体感覚を含めた身体体験について)を行った。 Step①では、3冊の手記を用いて文献検討を行った。グゥグゥ鳴るお腹、どうしようもない身体の冷え、鉄の重りをつけているかのような身体の重さなど、当事者は食事を制限することで生じた身体の変化も感じていたが、生きる違和感、自分は人間ではないかもしれないという異物感、魔物に取りつかれたような身体の奥から突き上げる衝動感など、得たいの知れぬ感覚、感情に収まりきれない感覚に苦しんでいた。ある人はその感覚をどうにか紛らわせようと、拒食や強迫的な行動を自分に課して自分の世界に没頭し、またある人は過食することでその感覚を眠らせようとしていた。これらの感覚は、身体の感覚を通して、または身体の感覚とともに感じられていると考えられたため、Step③では身体感覚と感情の両方を行き来しながら体験を聞くことが重要であるとわかった。 Step②では、摂食障害へのケア経験を持つ、専門性の高い看護師1名にStep①を踏まえて作成したインタビューガイドを用いたプレテストを実施し、ガイドの洗練化を行った。Step③では、現在2名の当事者にインタビューを実施している。対象者は、食べなくてはどうにもならない身体に出会うという経験を積み重ねる中で、その人にとっての「健康」が少しずつ変わり、やせ続けることを諦め、栄養を摂ることを葛藤しながら選択していた。このことから、不快な身体感覚に注目するきっかけに注目しながら、今後もデータを収集していくことが重要であるとわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度の予定は、①手記を用いた文献検討②当事者へのインタビューに用いるガイドの作成・洗練化③個別インタビューの実施④データの分析を行い、テーマ化を行うの4ステップであった。しかし、対象者をご紹介いただける施設や団体へのアクセスが難航し、②③の実施が当初の予定より遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在2名の当事者の方にインタビューを実施しており、数名の方にインタビュー協力をお願いしている状況である。今後は順調な対象者確保が期待され、遅れは大きくならない見込みであるため、データの飽和に向けて、更なるデータ収集を行い、収集したデータを丁寧に分析していく。
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Causes of Carryover |
対象者へのインタビューの開始が遅れたため、29年度予算の使用が予定よりも下回った。インタビューの一部を30年度に回して実施するため、次年度への繰越利用が必要である。30年度は、個別データ収集と分析の後、看護師を対象としたインタビューを各地で行う予定である。そのため、それにかかる旅費やテープ起こし、分析作業に必要な消耗品の購入、学会や論文投稿に掛かる費用を当該助成金より支出する予定である。
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