2020 Fiscal Year Research-status Report
老年期うつ病者のナラティヴから創出する治療的ケアプログラムの開発
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17K17520
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田中 浩二 金沢大学, 保健学系, 教授 (40507373)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 老年期うつ病 / ナラティヴ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、老年期うつ病者のレジリエンスの向上と抑うつにつながるビリーフの緩和という視点から、老年期うつ病者に対する治療的ケアプログラムを開発することである。 2020年度は、治療的ケアプログラムの内容を検討した結果、以下のようなケアの方向性が示された。①過去を振り返って罪悪感や後悔をもちやすい老年期うつ病者の苦悩を理解し、対話の中で苦悩を緩和する。②喪失体験の苦悩、身体や認知面の不安、死に対する思いに関心を向け、思考が負の連鎖から抜けることができるよう支援する。③患者が得意とすることや誇りになっていることあるいはこれまでの日常生活の中で何気なくしてきたことなどに着目し、それらの話を聞いたり一緒に活動してみたりすることで、患者が自身の力や日常性を取り戻すことができるよう支援する。また、そのようなケアを行うことで自己肯定感が高められるよう支援する。④周囲の人とのかかわりや関係性の中で回復できるよう支援する。⑤患者の人生や病いのストーリーを傾聴する中で、孤独や死の不安、喪失感などのスピリチュアルペインをとらえ、対話を通してこれらを緩和し、未解決の課題の解決や自己との和解を促進していく。⑥人生で成し遂げてきたことを聞き、生の連続性の感覚が体験できるよう支援する。⑦喪失体験と折り合いをつけながら、自尊心を保つことができるよう支援する。⑧自己の生き方との向き合いの中で、洞察や新たな意味付けが効果的に行われ、人間としての尊厳が保たれるように支援する。 また2020年度は、治療的ケアプログラムをもとに実践研究を行い、その成果を検証する予定であったが、COVID-19感染症の流行によって、臨床での研究を進めることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19感染症の流行によって、臨床での実践研究ができない状況が続いていること、および学生の臨地実習が一部学内演習となり教育のエフォートが高くなっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19感染症の状況をみながら、臨床の医師・看護師と協働して治療的ケアプログラムに基づく実践を数例のケースに実施し、ケースごとに効果を評価する。
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Causes of Carryover |
2020年度は、COVID-19感染症の影響によって、臨床での研究活動ができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、データー整理、学会発表などのために使用する予定である。
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