2019 Fiscal Year Research-status Report
高齢の腹膜透析患者における有害事象の発生リスクに関する研究:軽度認知症による検討
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17K17522
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
矢部 広樹 聖隷クリストファー大学, リハビリテーション学部, 助教 (40780664)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腹膜透析 / 高齢者 / 予後 / 軽度認知障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢の腹膜透析患者における認知機能の低下は、適切なPD手技の施行を通して、出口部感染に影響している可能性がある。そこで本研究では、2年間の前向き観察による高齢腹膜透析患者の出口部感染の発生リスクを、患者の認知機能と介護の有無から検討することを目的とした。65歳以上の腹膜透析患者31例(年齢75.5±6.5歳、PD歴46.7±34.2カ月)に対し、認知機能検査(MMSEとMoca-J)を実施し、その後の出口部感染発生までの日数を2年間観察した。さらに、出口部処置を介助で行っているか否かを評価し、出口部処置を介助なしで行う認知機能低下症例(処置不安群)について、出口部感染リスクを検討した。統計学的検討として、出口部感染の発生を目的変数としたKaplan-Meier曲線とLog-rankテストを実施した。有意水準は危険率5%とした。結果、認知機能低下ありと判定された症例は、MMSEで4例、Moca-Jで28例であった。Moca-Jで認知機能低下ありと判定された症例のうち、6例が出口部処置不安群に分類された。Kaplan-Meier生存曲線を用いた解析の結果、MMSEで判定する認知機能低下群と、処置不安群は、有意な出口部感染発生と関連していた。その他、年齢、糖尿病の有無、PD歴は出口部感染と有意な関連が見られなかった。Moca-Jで判定されてる認知機能低下は、軽度認知障害と呼ばれ、MMSEで評価される認知症と正常との間の状態とされる。本研究から、高齢PD患者はMCIが多く、出口部感染を予防するためには、患者の認知機能と介助の状況を考慮する必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、観察期間が2年間を超え、観察開始当初は確認できなかった入院イベントや腹膜炎の発生等を観察している。引き続き、リクルートした症例に対し、有害事象の観察を継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も予定通り、軽症認知症と腹膜透析手技の自立度、身体機能と、PD治療特有の有害事象(腹膜炎や出口部感染、PD離脱等)の発生や、ADL障害発生との関連を検討していく。
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Causes of Carryover |
物品購入費を安く抑えることができた点、英語の校閲費が抑えられた点から、未使用額が発生した。引き続き、来年度の必要物品の購入、英文校閲と投稿費に使用していく。
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