2020 Fiscal Year Research-status Report
高齢の腹膜透析患者における有害事象の発生リスクに関する研究:軽度認知症による検討
Project/Area Number |
17K17522
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
矢部 広樹 聖隷クリストファー大学, リハビリテーション学部, 助教 (40780664)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腹膜透析 / 高齢者 / 予後 / 軽度認知障害 / 出口部感染 / 腹膜炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢の腹膜透析(Peritoneal dialysis, PD)患者における認知機能の低下は、適切なPD手技の施行を通して、出口部感染や腹膜炎等のPD関連有害事象に影響している可能性がある。そこで本研究では、前向き観察による高齢腹膜透析患者の出口部感染の発生リスクを、患者の認知機能から検討することを目的とした。現在、65歳以上の腹膜透析患者33例(年齢75.3±6.2歳、PD歴47.2±35.1カ月)をリクルートし、認知機能検査(Moca-J)を実施し、その後の有害事象発生を観察中である。 今年度は、出口部処置の介助の有無と、Moca-J得点の中央値から、対象を4群に分け解析した。統計学的検討として、群間の患者背景の比較に、多重比較検定を行った。また出口部感染の発生についてKaplan-Meier解析とLog-rankテストを実施した。有意水準は危険率5%とした。結果,MoCA-Jの中央値は21点であり、25人(75.8%)の対象で出口部処置を介助で行っていた。「Moca-J高値・介助なし群」は8例、「Moca-J高値・介助あり群」は8例、「Moca-J低値・介助あり群」は17例であり、「Moca-J低値・介助なし群」は認めなかった。患者背景として、年齢、PD歴、各種血液データは群間で有意差を認めなかった。フォローアップ期間後の平均の観察期間は50.4±29.8カ月であり、6例が腹膜炎を経験し、16例が31.6±24.9カ月で出口部感染を経験した。生存分析の結果、「Moca-J高値・介助なし群」は、有意な出口部感染の発生と関連していた(p<0.05)。 本研究によって、 高齢PD患者の認知機能と有害事象の関係を明らかにし、有害事象の発生を予防するための治療選択を構築できると考えられる。本年度は新型コロナウィルス感染拡大の影響によって、医療施設でのデータ採集が行えず、現状のデータの解析と学会発表、論文執筆準備を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、本年度は医療施設でのデータ採集が実施できず、現状のデータの解析と学会発表、論文執筆準備に留まった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施施設において研究者の出入りが可能となるまで、研究協力者とWeb上での会議を実施し、データ測定と解析を進める。新型コロナウィルス感染の状況によって、研究協力施設へ出向き、データ測定を行う。また平行してデータ解析と論文の執筆を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、研究進捗が滞った影響で、データ採集のための旅費・交通費、および学会発表に係る経費、その他雑費の執行がされなかった。1年間研究期間を延長し、新型コロナウィルス感染拡大の影響を鑑みながら、データの採集および学会発表と論文投稿を進める。
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