2017 Fiscal Year Research-status Report
介護支援専門員の保有資格による情報収集の特徴:視線計測装置を用いた視覚の定量化
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17K17537
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
太田 沙紀子 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 特任助教 (80734152)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 介護支援専門員 / ケアマネジメント / 居宅介護支援事業所 / 居宅介護支援サービス / 介護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ケアマネジメントにおいて重要な過程である「サービス利用者の情報収集」に着目し、介護支援専門員の情報収集と専門性の関係を解明することである。平成29年度は、高齢者ケアのマネジメントに関する文献検討およびデータ分析等を実施した。主に介護給付費等実態調査データを活用して、ケアマネジメントにおける介護支援専門員の専門性による特徴を探索した。 介護支援専門員の上級資格である主任介護支援専門員に着目し、後向きコホート研究を実施した。主任介護支援専門員を有する特定事業所(特定の要件を満たす居宅介護支援事業所)のケアマネジメント(居宅介護支援サービス)は、一般事業所のケアマネジメントと比較して、要介護度の悪化リスクを低下させるかを検証した。第一に、要介護度の悪化をイベントとして無増悪時間分析を実施した。さらにカプランマイヤー法で累積無増悪率を算出し、ログランク検定を行った。 要介護者45,330人のデータを解析したところ、主任介護支援専門員を有する特定事業所のケアマネジメントを受けた要介護者は12,903人であった。平均観察期間は17.4月であった。2009年から2014年の累積無増悪率は、41.2%(特定事業所)と32.8%(一般事業所)であり、ログランク検定で有意差があった。従って、主任介護支援専門員を有する特定事業所のケアマネジメントは、一般事業所のケアマネジメントと比較して、要介護度の悪化リスクを有意に低下させることが示唆された。今後は、これらのアウトカム評価に加えて、ケアプランの内容を分析してプロセス評価を実施する。さらに視線計測実験にて、介護支援専門員と主任介護支援専門員における「サービス利用者の情報収集」の差異を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ケアマネジメントにおいて重要な過程である「サービス利用者の情報収集」に着目し、介護支援専門員の情報収集と専門性の関係を解明することである。平成29年度の研究計画の「A: 高齢者ケアのマネジメントに関する文献検討および事例調査」、「B: 国内外の視線計測に関する文献検討」は、計画通りに完遂することができた。Aに関しては、学術論文が少ないため、介護給付費等実態調査データを活用してケアマネジメントにおける介護支援専門員の専門性による特徴を探索した。その結果、介護サービス利用者45330人のデータを分析し、主任介護支援専門員を有する特定事業所(特定の要件を満たす居宅介護支援事業所)のケアマネジメントは、一般事業所のケアマネジメントと比較して、要介護度の悪化リスクを有意に低下させることが示唆された。本研究成果は第76回日本公衆衛生学会総会にて「特定事業所の居宅介護支援サービスと要介護度に関するコホート研究」の演題で口演発表した。論文発表に関しては、国際学術誌に“Association between advanced care management and progression of care need level in long-term care recipients: a retrospective cohort study”を原著論文として投稿し、査読を受けている。 さらに平成29年度の研究計画を完遂したため、平成30年度に予定していた「C:介護支援専門員の情報収集時の視線計測」を前倒しで一部実施した。具体的には、本学の倫理審査委員会に視線計測実験に関する研究計画を申請し、倫理審査委員会の承認を得た。視線計測実験に用いる画像に関しては、東京工業大学の先生に協力いただき、視線計測実験に向けて準備が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は予定通り、下記のCとDを実施する。 C 介護支援専門員の視線計測(定量調査):介護支援専門員の情報収集時の視線を計測する。具体的には、視線の停留点(注視点)、視線の停留時間(注視時間)、視線の停留回数(注視回数)を分析し、介護支援専門員の専門性による視線情報の特徴を明確にする。実験機器は、軽量で着脱が容易な眼鏡タイプの視線計測装置を用いる。視線計測の実験に使用する画像(高齢者の居宅、高齢者の立位や座位)は5枚程度とする。視線の計測方法は角膜反射法とする。視線追跡カメラで眼球運動を測定し、角膜上の赤外LEDの虚像が眼球運動に伴って平行移動するのを、赤外感度をもつビデオカメラで検出する。 D 半構造化面接(定性調査):視線計測を実施した介護支援専門員を対象に、半構造化面接を実施する。視線計測後、意識的に情報収集した項目等について、20分程度の半構造化面接を実施する。
平成31年度は、視線計測および半構造化面接のデータを分析する。視線計測に関しては、注視点項目を抽出し、注視点を比較する。視線の停留時間に関しては、停留回数や停留点の時系列を分析する。さらに必要に応じて、停留時間割合を比較する。統計分析では、停留時間等の分析ではマン・ホイットニーのU検定等を実施する。 さらに研究成果を介護および医療情報学に関する学会にて発表する(日本医療情報学会、日本公衆衛生学会、 Nursing Informatics等)。また、国際学術誌に論文を投稿する(International Journal of Medical Informatics、Geriatric & Gerontology International等)。発表が決定したものは所属組織のホームページに掲載し、広く成果を発信する。さらに、介護支援専門員の研修等にて研究成果について講演し、研究成果を社会に還元できるように努める。
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Causes of Carryover |
研究計画を前倒ししたため、研究費も前倒し支払請求を行った。その際、前倒し支払額を少し多めに請求したことにより、一部の研究費は次年度使用額となった。 使用計画に関しては、平成30年度の研究計画の一部は前倒しで実施したが、残りの研究に関しては計画通りに実施していく。
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