2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K17566
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川村 行論 北海道大学, 法学研究科, センター研究員 (10756323)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 受託者責任 / 企業年金 / 信託法 / 英米法 / 社会保障法 |
Outline of Annual Research Achievements |
イギリスの年金法において、年金財産の管理運用に関する「受託者責任」が問題となる者は、年金法が信託法をベースに設計されていることから、第一次的に受託者である。もっとも、年金法の立法過程において、事業主自身にも当該責任を課すべきかどうかが問題とされていた。これについて、本年度は重点的に検討することとした。 信託法理によれば、受託者以外にも受託者の義務と責任が問題となる場合がある。イギリスの判例法理において、財産の管理運用について指図権を有する者(指図権者)が存在する場合、受託者が辞任等で不在となった際に新たに受託者を選任する権限を有する者(選任権者)がいる場合には、受託者と同様の義務と責任が問題とされる。年金法の立法過程において、明示的にこれらの判例法理に従うべきかどうかの議論がなされていないものの、年金法が信託法理論をベースとすることから、これらの判例法理に従い取り扱われることが実務上なされている。もっとも、実務では、これらの判例法理に従い処遇されることについて問題点もあることが指摘されていた(なお、以上の研究の過程において、年金財産の管理運用に関する事務を委託された者が存在する場合、その者についても「受託者責任」が問題とされるのかどうかという論点について認識できた。)。 本年度では以上の事柄を明らかにすることができた。なお、日本社会保障法学会における個別報告(平成29年10月、於:小樽商科大学)に関連して、次年度において予定されていた日本法の検討を部分的に前倒しして実施している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示したような成果を挙げることができた。加えて、次年度以降に予定していた日本法の検討についても部分的に実施し、かつ、日本法との比較法研究における検討課題をも明らかにしている。このようなことから、本研究は順調に進展していると考えられる。 ただし、研究計画当初において予定していたイギリスにおける現地調査について、日程の調整がつかず、未実施となっている。現時点では、これによる支障は生じていないものの、可能な限り早期に実現するよう心掛ける。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度における研究は十分な成果を得られた。この意味で、本研究課題は当初の研究計画の通り遂行されている。この成果を今後の研究にフィードバックし、当初の計画通り、研究を遂行していく。もっとも、現在までの進捗状況において言及したイギリスにおける現地調査については、今後の進捗状況を踏まえ、その実施を検討していく。
|
Causes of Carryover |
本研究課題は3年間を予定し、かつ、3年間を通じて一体的に遂行することを予定している。そして、初年度の配分額を使い切らずに、次年度において繰り越して使用することも予定されている。このため、本年度において、次年度使用額が生じた。 平成29年度において生じた次年度使用額については、平成30年度において使用し、解消することになる。
|