2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K17566
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川村 行論 北海道大学, 法学研究科, センター研究員 (10756323)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 受託者責任 / 忠実義務 / 年金資産の剰余金 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は研究次年度である。本年度では、前年度のイギリス法研究の成果を踏まえつつ、日本における企業年金法制において、いかなる者に対して「受託者責任」が課せられているのか、そのためにはいかなる論理が用いられているのか、それについて法理論的にどのようなことが問題とされているのか、について主として検討した。 具体的には、1997年に開催された当時の厚生省における厚生年金基金の資産運用に係る受託者責任ガイドライン研究会の議論を中心に、以上の問題について検討した。その結果、アメリカのERISAやイギリスの年金法を参照していること、主としてERISAを参考にしたルール作りが目指されたこと、その結果として、基金の理事や年金基金から運用を委託される信託銀行・保険会社に対する義務付けを中心にして考えられたこと、それら以外の主体については十分な議論がなされていないこと、が明らかになった。 以上の研究成果については、部分的ながら、2018年6月に行われた比較法学会(於:関西大学)において報告した(年金資金の剰余金の処遇について、イギリスでは忠実義務の観点から問題にされる一方で、日本ではそのような観点から検討されていない等)。また、同学会における質疑応答を踏まえて、報告内容を修正した論文も公表している。更に、近年、AIJ事件に関連した企業年金関係の訴訟が頻発し、「受託者責任」が争われていることを踏まえて、北海道大学社会保障法研究会において、以上の訴訟に関する判例報告も行った。 なお、本年度の研究において、予期せぬ研究成果も得られた。日本では、企業年金法制における「受託者責任」を参考にして、公的年金制度における年金資産の管理運用に関する行為準則が規定された、ということである。最終年度では、これまでの研究成果を示しつつ、この問題についても可能な限り取り上げたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の進捗状況は全体として当初の計画通り進んでいる。しかしながら、研究初年度において実施予定であったものの、研究次年度に延期せざるを得なかったイギリスにおける現地調査について、次年度においても実施することができなかった。これは研究代表者自身が研究機関を異動することになり、その準備などのために、渡英するための時間を確保することができなかったことによる。 以上のような理由から、研究次年度の進捗状況について、「やや遅れている」という評価をすることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題における研究自体については順調に進捗しているが、上記のように、イギリスにおける現地調査については未実施となっている。これについては、新たな研究機関における公務などの予定を早急に把握し、渡英するために必要とされる日程の確保をすべく検討している状況にある。早期にイギリスにおける現地調査を実施し、その成果を研究課題にフィードバックするよう対応を検討する。
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Causes of Carryover |
文献を購入する予定であったが金額的に不足していたため、次年度の予算と合わせて購入するほうが良いと判断した。こうしたことから、次年度使用額が生じた。次年度使用額については翌年度の助成金と合わせて文献購入費に充てる。
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