2017 Fiscal Year Research-status Report
多職種連携手術用エネルギーデバイス教育プログラムの開発と学習効果の検証
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17K17567
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邊 祐介 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (90789405)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医療安全 / 医療事故 / 電気メス / エネルギーデバイス / 手術室火災 / 患者熱傷 / 多職種連携教育 / surgical smoke |
Outline of Annual Research Achievements |
エネルギーデバイスに関連して発生する手術室火災に対する外科医、手術室看護師、臨床工学技士の知識を断面調査した結果、すべての職種において知識が十分でない状況が明らかとなった。エネルギーデバイス関連の有害事象に関する質的調査により、デバイス先端の余熱による患者熱傷や手術中に発する煙(surgical smoke)による医療者の健康被害等が学習到達課題として新たに抽出された。さらに、これまで学習課題に定めていなかったレーザーを含め、一般外科以外の外科系診療科において、他デバイスに関しての内容が必要であることが明らかとなった。既存デバイスの特性を検証するため、最新の電気メス本体(electrosurgical units)の安全機能や低電圧モードについて解析を行った。 教育プログラムの実施環境や実施に際する制約についての調査では、大学病院以外でシミュレーションセンターを有している施設は少なく、設備や予算的な制約が多い現状が判明した。様々な施設内で実施可能な教育プログラムの開発を目標としているため、トレーニング目的での手術室利用、実施コストや安全面への配慮についてさらなる検証が必要である。国際学会のエネルギーデバイス関連委員会 [FUSE (Fundamental Use of Surgical Energy) committee, Society of American Gastrointestinal and Endoscopic Surgeons (SAGES)]において聞き取り調査を行った結果、北米においては法律や制度による制限が多いためシミュレーションシナリオを修正する必要性が示された。模擬炎を使用した手術室火災対処シミュレーションを開発し、聖路加国際大学ならびにハワイ大学シミュレーションセンターで実施試験(アルファテスト)を行い、その実行可能性を確認した。前述までの質的調査に基づき、平成30年度はすでに取り組んでいる多職種参加型教育プログラムの継続開発と効果判定を実施していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のごとく、学習到達目標の探索的分析は概ね終了している。模擬炎を使用した手術室火災対処シミュレーションはすでに開発し、その実行可能性を確認した。分析結果のさらなる統合が必要ではあるが、学習到達目標に沿った学習教材の開発に随時着手していることから、現在まで本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度から続くニーズ分析に加え、平成30年度の研究目標である教育プログラム開発と効果判定に関する方策を示す。 ・ 多職種参加型の教育プログラムの開発:施設毎に実施できるシミュレーションシナリオが異なるため、模擬煙と模擬炎を用いたシミュレーション教育の学習効果を比較検証する。比較検証にあたり北海道大学関連施設で実施試験(ベータテスト)を行い、その実行可能性や効果の検証、必要があればシミュレーションシナリオの修正ならびに変更を行う。分析から抽出した不適切行動を含んだシナリオビデオを作成し、試験ならびに教材として利用する。新たに抽出されたsurgical smokeについては、その有害性に関する情報取集を継続し、必要に応じてsurgical smokeの分析実験を行う。一般外科、産婦人科、心臓血管外科以外の外科系診療科固有の危険性について調査を続け、学習到達目標に応じたスライド教材を作成する。最終的には、前述の教育プログラムと統合し2時間程度で実施可能なコースを目指す。本年度は、体系的に行ってきた教育プログラムの開発結果を国内外の学会にて公表予定である。 ・ 新規に開発する教育プログラムの実施と学習効果の科学的検証:北海道大学関連施設ならびに他協力施設と連携し、本年度後半に外科医・研修医・手術室看護師らを対象としたコースを実施する。コース前後に知識・パフォーマンスレベルを評価し、教育プログラムの学習効果の判定を実施する。コース終了約3ヶ月後に学習持続効果について評価し、教育プログラムの学習効果について結果を導く予定である。本検証内容については、本年度中に抄録締切のある国内外の学会へ公表し、和文ならびに英文論文として公表していく予定である。すでに国内で定期的に実施しているエネルギーデバイスの教育コースにて、随時内容を公表していく。
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