2017 Fiscal Year Research-status Report
Host-parasite interaction controlling brain-tropic migration of Toxoplasma gondii
Project/Area Number |
17K17570
|
Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
梅田 剛佑 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 特任研究員 (20792443)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | Toxoplasma gondii / 脳 / 宿主・寄生虫相互作用 / ケモカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、本研究の目的であるトキソプラズマの脳指向的な体内移動機構の解明に関連し、初期感染部位において原虫に感染した免疫細胞におけるケモカイン受容体の発現の解析を実施した。腹腔内接種により、CL57BL/6マウスにトキソプラズマのタキゾイトを感染させ、感染5日目の腹腔浸潤細胞を回収し、RNAを抽出した。回収時期は原虫が血液脳関門を突破し脳内に検出され始める時期(感染7日目ごろ)よりも前のタイミングとして決定した。抽出したRNAを試料とし、既知のケモカイン受容体の遺伝子発現を逆転写定量PCRにより解析した結果、原虫に感染したマウスの腹腔浸潤細胞では、培地のみを注射した対照群と比較して、CCR5の発現が10倍程度、CXCR2の発現が50倍程度上昇しており、これらの受容体陽性の細胞が感染に応答して腹腔内に多く浸潤してきたことが示唆された。CCR5はマクロファージや樹状細胞、T細胞表面に主に発現しており、CXCR2は好中球表面に主に発現するとされている。さらに、同じマウスから採取した脾臓や脳からもRNAを抽出し、これらの受容体に対応するケモカインの発現を定量した。この結果、感染群では脳において原虫は検出されなかったにもかかわらずCCR5のリガンドの一つであるCCL8の発現が上昇していた。したがって、腹腔に浸潤後に原虫に感染した免疫細胞のCCR5に血流を介してCCL8が作用することで、感染細胞が脳内へ誘導されやすくなっていると考えられた。このことから、原虫の感染が移動先となる臓器におけるケモカインの発現を遠隔的に上昇させ、標的臓器への移動を促進している可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では脳組織を用いたトランスクリプトーム解析により、急性感染期の脳内で発現が上昇するケモカインを選抜する予定であったが、RNA-seqに必要な費用を考慮して計画を改善し、まず感染時の腹腔浸潤細胞を試料として既知のケモカイン受容体31遺伝子の発現をすべて調べ、そののちに発現が変動していた受容体に対応するケモカインリガンドの発現を脳や脾臓といった初期感染部位からの移動先となる臓器において定量した。これにより、腹腔に浸潤し、原虫に感染した細胞集団がどのようなケモカイン受容体を高発現しているのか明らかにすることができ、当初の計画よりもコストを抑えたうえで、移動先臓器から分泌されるケモカインの変動を明らかにするという目的を達成することができた。このことから、おおむね順調に計画は進展していると判断した。一方で、このようなケモカイン受容体やケモカインの発現変動を引き起こす要因となる原虫因子の探索はまだ準備段階であり、より効率的に計画を進めていく必要があると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の仮説では原虫の感染により免疫細胞におけるケモカイン受容体の発現が上昇することを想定していたが、当該年度の結果からはむしろ、免疫細胞にもともと発現しているケモカイン受容体に作用するケモカインの発現を、初期感染部位からの移動先臓器において遠隔的に上昇させている可能性が考えられた。このため、当該年度に得られた結果について再検証しつつ、移動先臓器におけるケモカインの発現に作用する原虫因子の探索を行う。選定したケモカインのプロモーター配列をルシフェラーゼ遺伝子の上流にクローニングしたベクターを作製する。これを原虫cDNAを組み込んだベクターとともにHEK293T細胞へ導入し、原虫cDNAがケモカイン発現の亢進作用を持つか否かレポーターアッセイを実施する。発現亢進作用に基づいて選定した原虫因子を対象に、遺伝子機能を欠損させたノックアウト型原虫を遺伝子ターゲティング法により、また標的遺伝子コーディング配列を再導入したコンプリメント型原虫をCrispr/Cas9法により作製する。再導入配列にはのちの解析のためタンパク質タグを付加しておく。作製した遺伝子改変原虫を用い、原虫因子と感染細胞の脳指向性の関係を細胞遊走アッセイを利用して評価する。C57BL/6マウスの初代脳細胞を培養したウェルプレートにメンブレンインサートをセットし、上側に感染免疫細胞を加える。経時的に細胞の遊走を定量し、当該原虫因子の有無で結果を比較する。また、培地中のケモカイン濃度もELISAにより測定する。感染対象にはマウスの骨髄由来マクロファージおよび樹状細胞を予定している。また、遺伝子改変原虫を用い、C57BL/6マウスへのタキゾイトの腹腔内接種後、各臓器における寄生強度を原虫のB1遺伝子を標的とした定量PCRによって経時的に測定し、実際の宿主体内における当該原虫因子の作用を評価する。
|
Causes of Carryover |
当該年度の使用に際に端数として生じた金額であり、当該の金額に関する特別な使用計画はない。
|
Research Products
(4 results)