2018 Fiscal Year Research-status Report
Omics Profiles of Fecal Microbiota Change in Irritable Bowel Syndrome Patients with Diarrhea and Symptom Exacerbation
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17K17584
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 由佳里 東北大学, 医学系研究科, 助教 (50721453)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細菌叢 / 過敏性腸症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
健常者 40 名、下痢型 IBS 患者43 名 (全員男性)について得られた、通常排便時並びに、IBS群では更に腹部症状出現時に収集した口腔サンプル(歯垢、唾液)について解析を行った。臼歯から歯ブラシ法にて得られた歯垢と、唾液サンプルについて、PowerSoil DNA kit (QIAGEN) を用いて16SリボソームDNAの抽出を行い、Illumina Miseq を用いて配列決定を行った。尚、すべての検体について、9000-30000リードという十分なシークエンス量が得られたことを確認した。得られたデータはPAST3、Rを用いて解析した。 Principal Coordinate Analysis (PCA)解析では、歯垢と唾液の間に距離を認めた。各部位毎の細菌叢について、α多様性解析では、歯垢において通常排便時の健常者群とIBS群で有意差を認めたが、IBS群内の通常排便時と症状出現時では有意差を認めなかった。唾液ではいずれの群間においても有意差を認めなかった。Phylumレベルの解析では、歯垢はFusobacteriaとProteobacteriaで、健常者群とIBS群の通常排便時について有意差を認め、唾液はFirmicutesにおいて有意差を認めた。 同じ被験者群から得られた便検体による、細菌叢では、健常者群とIBS群では通常排便時のPhylumレベルの有意差を認めなかったのに対して、口腔内細菌叢は、これらの群間差を認める結果であった。一方、便ではIBS群内の症状出現有無で細菌叢変化を認めたが、口腔内検体では認めないとの違いがみられた。以上より、当初の仮説通り、IBSの腹部症状出現時と通常排便時の腸内細菌叢は異なる結果であった。しかし、これがIBSの症状トリガーによる影響か、水様便という便性状による変化なのかは16SrDNAの細菌叢解析のみではわからない。しかし口腔内細菌叢について、健常者とIBS通常排便時群で差がみられたことから、慢性的なストレス刺激が細菌叢に影響している可能性が高いと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、MIseqでのシークエンスについて十分量のリード数が得られず対応に苦慮したが、試薬ロットの異常と判明し、再解析となった。しかし再解析により解析に充分たるデータ数が得られ、その後は概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、得られた便ー口腔細菌叢の情報について、部位間関連について検索を行う。口腔と消化管では、グラム陽性・陰性菌などの傾向が異なるが、近年大腸がんにおいて、口腔内に主に存在するFusobacteriumとの関連が指摘されるなど、部位間での細菌叢情報授受について重要性が高まっている。また現在、得られた便検体について、メタボローム解析を行っている。16Sリボソーム解析による、便細菌叢の傾向より、IBSの症状出現有無による腸内環境変化が、細菌叢変化に影響している可能性が示唆されている。これらについて、主に短鎖脂肪酸、神経伝達物質を軸に解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
Illumina Miseqによる細菌叢解析の際に、機器トラブルにより予定していた研究予算や期間との微小な差が生じたため。しかし、研究の順番や方法を調整することで、研究進捗自体に大きな差はでていない。次年度細菌叢の関連解析に関わる費用に充てる予定である。
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