2017 Fiscal Year Research-status Report
液晶配向を利用した有機色素結晶の秩序化と偏光機能の検討
Project/Area Number |
17K17597
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柴田 陽生 東北大学, 工学研究科, 助教 (70771880)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 二色性染料 / 単結晶 / 液晶 / 偏光 / 溶液成長 / 分子振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、将来的な実現が期待されている印刷技術を駆使した電子デバイス開発需要に対応すべく、高秩序を有する二色性染料単結晶の偏光素子を溶液プロセスで開発することを目的としている。一般に、二色性染料は光吸収軸に相当する遷移モーメントが分子内で単一方向に存在しており、配向を揃えることで直線偏光を透過する偏光子としての応用が期待できる。 本目的の達成に向けた初段階となる今年度前半は、溶液成長で結晶化を可能とする染料の探索を実施した。材料探索にあたって、液晶分子の配向に沿って二色性染料分子の配向が従うGuest-Host効果を成長過程に導入することで、配向方位を任意制御できることを期待し、液晶と良好な溶解性を示す染料を選択する必要があった。また、優れた偏光特性の発現を比較的高い二色比を持ったアゾ骨格を有する染料を検討した。これらの条件を照合し、アゾ系染料Sudan Black B (東京化成工業社)、林原社のジアゾ系色素(G-207, G-241, G-472)の4種類について、トルエン溶媒中で過飽和状態を利用した結晶成長を検討した。その結果、G-207・G-241については1次元的な分子スタックが支配的なことに由来する針状結晶片の析出を確認した。 以上の知見を基に、今年度後半は平行配向処理を施した液晶セル内に、ネマチック液晶(5CB)を溶媒として溶解させたG-241溶液を注入し、過飽和状態における結晶作製に取り組んだ。溶液濃度・セル厚の最適化により、平行配向液晶と消光位が同一である5mm×500μmの大きさの染料結晶の析出に成功した。これを放射光X線散乱法で評価を行うことで単結晶であることを明らかにした。さらにアゾ基の伸縮振動について、偏光赤外分光法による解析を進め、液晶の配向方位に沿って二色性染料の光吸収軸が配向することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に実施した研究により、液晶との溶解性に優れ、液晶の配向状態に影響を受けやすい二色性染料分子でも単結晶成長条件が存在しており、ラビング処理のように液晶の配向方位を制御する手法によって、染料結晶の吸収軸(塗布型偏光板の透過軸)を面内で自由に制御できることを明らかにした。このことから、今年度の目標である染料結晶による偏光機能の発現に至ったため、進捗状況はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究から、高二色比を有するアゾ系染料材料について二枚のガラス板で挟み込まれた液晶配向場(セル構造)における単結晶成長条件を見出し、直線偏光を透過する素子として機能することを見出した。そこで本年度は、前年度に得られた知見を塗布・印刷プロセスに適合させることを目指して、溶液塗布による染料結晶成長に取り組んでいく。通常、液晶塗布膜は空気界面での配向歪みが生じることから、結晶化プロセス中における染料分子の配向挙動に影響することが懸念される。従って、液晶の配向分布と結晶構造の対応関係について注意深く解析を行うことを試みる。 また、前年度作製に成功した染料単結晶は透過軸をクロス(消光時)の光漏れが見られており、この要因についても染料分子の配向やその揺らぎに着目しながら更なる解明を進め、ラビング配向膜だけではなく光配向膜による基板界面制御によって、より優れた消光比を有する塗布型偏光板のプロセス開発を進めていく。研究は、作製した染料結晶膜に対する偏光評価・解析をベースとしながら、赤外分光法やX線回折法などの測定を行い、分子の光学的性質と結晶構造の評価を実施しながら進める。
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Causes of Carryover |
今年度の研究が当初の予定よりも順調に進み、申請時に計上していた消耗品の購入費用を抑えることができたため、次年度の塗布型偏光素子の開発および成果発信のために参加する学会・論文投稿料として使用する。
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