2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K17599
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 宗則 東北大学, 工学研究科, 助教 (00715906)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 三島通庸 / 都市デザイン / 都市計画 / 擬洋風建築 / 景観計画 / 菊地新学 / 郡役所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代日本の内務官僚である三島通庸の都市計画分野への貢献に焦点をあて、彼の都市計画手法を明らかにすることを目的としている。本年度は、郷土史を中心とした既往研究や新聞記事等の基礎情報の整理を行った。 三島が山形県令を務めた期間に多数の擬洋風建築が建てられたが、これは三島が推進したものといわれ、一部の建築物については直接技術的指導を行う等、三島の建築に対する高い関心を確認した。一方で、三島の関与が指摘されている建築物については、設計者が不明なものが多く、設計者が判明している建築物であっても三島の意向の反映が指摘されている等、山形県令時に建設された建物の意匠に対する三島の影響を詳細に把握することは困難であった。そこで、三島の業績をとりまとめた当時の写真による記録と新聞記事から、三島の業績において中核となる公共建築物の抽出を行った。そして、抽出された郡役所や警察署等の公共建築物について、立面構成を整理した上で、立面と門や道路との接続関係に焦点をあてた分析を行い、立面構成と都市構成との物的な関係の把握を行った。郡役所については、建築様式を統制しようとしていたことは先行研究において指摘されていたが、厳密な意匠の統一が図られていなかったが確認された。また、玄関ポーチと門とが正対する構成が、対象とした建築物全てにおいて認められた。この構成は、門を通る立面との直交軸上を建物に正対する視点場と考えれば、消失点が玄関ポーチにより明示され、明瞭な一点透視の構図が示唆されており、三島の建築を含めた都市デザイン手法を考える上で有用な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、基礎資料の収集及び現地調査により、三島の都市計画に関する数多くの実績から分析対象となる都市の抽出を主な目標として研究を行ってきた。大半の都市についての基礎資料の収集は順調に行えたため、CGによる復元等の分析作業は当初の計画以上に進展している。一方で、資料が集まった都市を先行して分析を進めたため、一部現地調査が未実施の都市がある等、分析対象とする都市間において研究の進捗状況に差が生じたため、研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
一部未実施の基礎資料の収集及び現地調査を進め、図面やCGによる復元を用いた分析により、三島が行った都市計画の物的な構成的特徴の把握を行う。
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Causes of Carryover |
収集できた基礎資料に基づく分析作業を先行して進めたため、今年度予定していた現地調査が未実施となり、旅費及びそれに付随する謝金に差額が生じた。また、購入予定であった物品の販売延期もあったため、計画していた使用額を下回ることとなった。今年度未実施の内容については、全て次年度実施予定である。
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