2021 Fiscal Year Research-status Report
細胞外イオン濃度変化を介したニューロン-グリア相互作用の解析
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17K17615
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
後藤 純一 山形大学, 医学部, 助教 (70435650)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ニューロン / シナプス可塑性 / ニューロングリア相互作用 / グリア |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、細胞外カリウムイオン濃度の計測装置の調整と測定の為の条件検討を行った。計測装置の故障した部分を代替する為に前年度に導入した新たなデータ取得用デバイスを用いて、計測プログラムを含めた実験系の立ち上げを行ったが、未だ長時間の安定した記録を行うには至っていない。新たな計測装置の立ち上げが難航した為、従来の実験装置を使用した実験を同時並行で行った。こちらは本研究課題の開始前から行っている研究課題からの継続の研究であるが、本研究とも関連するものであり、結果を論文として投稿した(令和4年度に発表された。Goto JI et al. Learn Mem. 29(4):110-9.(2022))。当該論文ではIP3受容体結合タンパク質であるIRBITのKOマウスを用いて急性海馬スライス中のSchaffer側枝ーCA1シナプスにおける脱増強現象・及びLTP抑制現象を調べた。先行研究では1型IP3受容体のKOや阻害薬の投与によってCA1シナプスにおける脱増強・及びLTP抑制が阻害されることが示されていたが、IRBIT KOマウスでも同様に脱増強・及びLTP抑制の両方が阻害されていた。一方でIP3受容体KOマウスでは亢進していたshort tetanusによるLTPには変化が認められなかった。このことはIP3受容体シグナルの下流で1)脱増強・LTP抑制と2)short tetanus LTPの少なくとも2つの情報伝達経路が存在することを示していた。後者の経路に関してはストア作動性カルシウム流入チャネルの関与が疑われており、またストア作動性カルシウム流入チャネルの阻害薬を海馬スライスに投与するとCA1錐体細胞の興奮性が上昇することを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染症の流行による大幅な実験の遅延と計測機器の一部の故障により進捗が遅れたこと、及び学会業務等の本研究以外の業務量が大幅に増えたことが主な要因である。また、イオン濃度計測の安定性とシグナル/ノイズ比の向上の為に装置の改良を行っているが、計測用のプログラムの調整が難航しているため、改良した実験装置の方では安定したデータの取得にまで至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、細胞外カリウムイオン濃度の一時的な変化がシナプス可塑性誘導に与える影響について解析を進める。LTP誘導と脱増強(depotentiation)のそれぞれの可塑性誘導について細胞外カリウムイオン濃度の一過性上昇による影響についてのデータをさらに追加し、統計学的な解析を行う。また、可塑性誘導に影響が見られる条件下において、興奮性シナプス後電位と活動電位の関係性や、ニューロンの内因的興奮性(intrinsic excitability)に何らかの影響があるかを調べることで、カリウムイオン濃度の一過性変化が長期的に及ぼす影響について検討する。 イオン選択制電極の測定値の安定性の問題は実験装置を一部組みなおすことで解決を目指す。現在、制御用のプログラムが1チャンネルでの計測が部分的に可能であるが、さらに長時間の安定した記録を行うとともに、これを多チャンネルに増やし刺激入力系の構築を行う。 また、short tetanus LTPがIP3受容体KOマウスで亢進するのに対してIRBIT KOマウスでは野生型と有意差がないことから、ストア作動性カルシウム流入チャネルが関与している可能性がある。ストア作動性カルシウム流入チャネルの阻害薬がCA1錐体細胞の興奮性を変化させることから、これとshort tetanus LTPや脱増強等との関連を細胞外カリウムイオン濃度との関係も含めて検討する。
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Causes of Carryover |
感染症の流行による実験計画の遅延、学会業務等の本研究以外の業務量が大幅に増えたこと、及び一昨年度の機器の故障に伴う実験装置の構成の変更と計測用プログラムの作製により計画全体が遅れたことにより次年度使用額が生じた。次年度では引き続き(1)計測用プログラムを完成させる(2)パッチクランプ用の実験装置を稼働させ、実際のデータ計測が可能になるようにノイズ除去などの調整を行う、の2点を終了させ、その後、途中の段階で止まっているデータ計測を行う。この過程で計測用プログラム作製の支援に用いるソフトウェア、実験用の動物や試薬等の購入に当該予算を使用する。また、実験装置の構成変更を行う過程で必要が生じれば機器の修理や購入に予算を使用する可能性がある。
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