2017 Fiscal Year Research-status Report
小・中学校の理科教員養成におけるLMSを活用したフィードバックに関する研究
Project/Area Number |
17K17619
|
Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
平中 宏典 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (10613531)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | フィードバック / 理科教員養成 / 機械学習 / 学習管理システム / LMS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,小・中学校理科教員の養成課程において実践的指導力の強化とアクティブ・ラーニングの充実をはかるため,受講者に対するメタ認知的視点からのフィードバック手法とその影響を検討することである。具体的には,独自開発の学習管理システム(LMS)を用いてチームプロジェクトである模擬授業実施までの手順を支援する中で,個々の受講者に対して機械学習を活用したフィードバックを実施する手法を開発し検証することである。フィードバック手法については,直接的なフィードバックとなる「理科の授業づくりに関わる成果物に対するコメント提示」と間接的なフィードバックである「ラベル付けした授業データの目的別例示」を併用するものとした。 「理科の授業づくりに関わる成果物に対するコメント提示」においては,模擬授業の前後で作成した振り返り文章に対して受講者へのフィードバックを行うことを目的とし,PHPで構築したLMSにおいてMecabを用いた自然言語処理およびTF-IDFによる受講者別の文章特徴量算出を可能にし,LMS上で結果が利用できるようシステムの開発および改良を行った。また,過去2年間分の模擬授業を対象に,実務家教員を含む担当教員の講評を映像データからテキスト化し,フィードバックテキストとして整備を行うため,共起ネットワーク分析を中心としたテキスト解析を行った。これらのデータを受講者成果物と組み合わせることでナイーブベイズ訓練用のデータセットを作成した。 「ラベル付けした授業データの目的別例示」においては,模擬授業に関わる成果物の画像および映像データへのテキスト化およびラベル付けを中心に進めた。過去2年間分の模擬授業ビデオについて,理科授業の基本プロセス,教師知識に基づいてタグ付けを行った。作業に際しては,テキストデータ生成及び画像・映像処理を行う専用システムを追加で構築し作業の効率化を図った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「理科の授業づくりに関わる成果物に対するコメント提示」においては,受講者が作成した文章に想定より多く表記の揺らぎや文法上のミスが見られ,テキスト分析に際しての形態素解析および単語辞書整備に当初計画以上の時間を要している。ラベル付けしたデータセットを見直しながらベイジアンフィルタの訓練と分類を試行することで,おおよそコメント付けの目処はついている。 「ラベル付けした授業データの目的別例示」においては,データ生成補助システムを作成したことで効率よく作業が進み,模擬授業ビデオのラベル付け,授業協議結果のテキスト化,授業後の教員による講評のテキスト化について2年間分の作業を完了した。一部のデータはすでに公開用サーバにおいてライブラリとして試行的導入を進めており,簡易的なアクセス解析結果より間接的フィードバックとして一定の効果を発揮していることが明らかとなっている。 以上から,本研究の進捗状況を総合的に判断し,概ね順調に推移していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
「理科の授業づくりに関わる成果物に対するコメント提示」においては,成果物原本を修正して作成したコーパスを訓練データとして用いることで,ベイジアンフィルタによる結果精度の向上を検討していく。また,フィードバック対象となるキーワードを増やすため,ラベル付けをより効率化するためのシステム開発を同時に進めていく。また,LMS上で結果表示できるよう学習サーバと公開サーバの連携をすすめ,受講者に対する試行的なフィードバックを進め予察的な調査を行う。また,小中学校におけるデータ収集についても連携校と調整を図りながら順次進め,フィードバック用の材料として整備を進めていく。 「ラベル付けした授業データの目的別例示」においては,ラベル付けした結果に基づいてライブラリより参考資料の提示を行えるようLMSの改良を進めていく。また,受講者による模擬授業結果のテキスト入力システムと,協議結果のテキスト入力システムについても開発を進め,試行的な利用で改善点を洗い出していく。
|
Causes of Carryover |
受講者が授業評価および協議結果のとりまとめを行うため,LMSを拡張し受講者に必要なICTデバイスを複数台導入し,効果検証を進める予定であった。しかし,フィードバック用データセットの整備や新学習指導要領へのシステム対応などサーバ側の整備に予想以上の時間を要したため,当該機能に関わるクライアント用タブレット端末の整備を先送りにする必要が生じた。 その一方で,非構造型データのテキスト化等の処理は当初の予定よりも使用額が膨らむ見通しであることから,次年度も引き続き集中して対応することとしたい。また,クライアント用端末の導入については,グループワークの円滑な実施に必要な条件や,受講者のICT端末所持率などに応じて整備数を調整しながら対応していく。
|