2019 Fiscal Year Research-status Report
食物アレルギーの発症における腸内細菌叢の役割の解明
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17K17624
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 寿人 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (80783042)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 食物アレルギー / 腸管免疫 / 腸内細菌叢 / バクテロイデス属 |
Outline of Annual Research Achievements |
食物アレルギー発症のメカニズムの一端を解明するために、食物アレルギー群と非食物アレルギー群とで腸内細菌叢の比較を行う研究を行った。2019年度は患者群の検体を収集するとともに、腸内細菌叢の解析を実施した。 食物アレルギー群29名(鶏卵13名、乳製品9名、小麦3名、鶏卵と牛乳3名、牛乳と小麦1名)、非食物アレルギー群21名を収集し、便から腸内細菌のDNAを抽出し、次世代シーケンサーによる16S-rRNAメタゲノム解析を行った。両群の比較では、Wilcoxon signed-rank testを使用し、食物アレルギー群はバクテロイデス属の細菌数が低下(p=0.014)しており、エスケリキア属の細菌数が増加(p=0.034)していた、という結果を得た。細菌の多様性の指標であるSimpson indexは有意差がなかった。 食物摂取による影響を考察するために、食習慣のアンケートをもとに、鶏卵と乳製品のそれぞれの継続的な摂取の有無でクラス分けを行い比較を実施したところ、上記の食物アレルギー群・非食物アレルギー群でみられた、バクテロイデス属の細菌数の低下とエスケリキア属の細菌数の増加は確認されなかった。バクテロイデス属菌は腸管免疫系に対して免疫修飾作用を有していることが報告されており、バクテロイデス属菌の減少は腸管免疫の寛容性に影響を与えたことが考察される。 今後の研究の展望として、減少しているバクテロイデス属菌と増加しているエスケリキア属菌の種類の特定を行う。菌種を特定することができれば、食物アレルギーを予防するための生菌製剤の開発等が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年に研究代表者の異動により所属機関が変更になった。研究内容における倫理震災委員会の承認、研究環境の再構築のために時間を有したため、研究がやや遅れてしまった。 当初予定していた検体数の収集は2019年度にほぼ完了しており、初期解析も終了している。延長した1年で解析の取りまとめと学会発表、論文作成を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度までに食物アレルギー群において、バクテロイデス属菌の減少とエスケリキア属菌の増加していることを見出した。2020年度の研究の方針として、バクテロイデス属のどの菌種が減少したのか、エスケリキア属のどの菌種が増加したのか、さらに詳細に解析を実施し、菌種の特定を行う。 また、本研究成果を2020年度に開催予定のWorld Allergy Congress 2020で発表し、他の専門家の意見を聞くとともに、論文作成を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の異動に伴い、研究環境の整備、倫理審査委員会での承認等を再度得るため、半年程度の研究の遅れが生じてしまった。 残金は可能な限り正確な研究とするために、食物アレルギー群の検体収集と腸内細菌叢の解析を継続する。また、本研究成果の発表のため、学会参加費とそれに伴う交通費や宿泊費、英文論文作成のための校正費等に使用する予定。
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