2019 Fiscal Year Research-status Report
材料強度発現のメカニズム解明のための金属組織を考慮したマルチスケールき裂進展解析
Project/Area Number |
17K17627
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
新宅 勇一 筑波大学, システム情報系, 助教 (80780064)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 破壊力学 / 計算力学 / 結晶塑性 / 異方性損傷モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度開発したマルチスケール解析手法のプロトタイプをもとに、Augmented Lagrangian methodを導入することで、有限要素モデルが非周期的な分割であっても周期境界を付加できるようにプログラムを発展させた。また、多結晶体モデルの作成には四面体要素を用いることで、任意のランダムな結晶粒の分布を比較的簡単に再現可能となった。ただし、一次の四面体要素の場合にはひずみが要素内部で一定値で近似されるため、精度が低く、体積ロッキングやせん断ロッキングなどの問題も生じることが知られている。そのため、二次の四面体要素を適用可能なようにプログラムを改良したが、その反面、自由度と積分点の増加に伴って計算コストが当初の予想以上に大きくなってしまった。そのため、今後はプログラムを並列化するか、数値解析を安定化させる手法を導入することで1ステップ当たりの変位の増分量を大きく設定可能なように改良する必要があると考えている。以上により、任意のランダムな結晶粒形状と分布を有する多結晶体金属のマルチスケール解析が可能となった。さらに、初年度提案した異方性損傷構成則と組み合わせることで、金属材料の結晶格子の異方性弾性変形・結晶すべりによる異方性塑性変形・へき開面の破壊といった微視的なメカニズムに基づいて巨視的な強度評価が可能となった。これにより、多結晶体金属の変形を均一として扱う巨視的な等方性損傷構成則では表現不可能な「微視的な不均一性に起因した巨視的な強度のバラつき」を予測できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大の目標であるマルチスケール解析手法は完成することができたため、研究全体としては概ね順調であったと考えている。しかし、開発した解析手法を三次元へ拡張したことに加えて、二次の四面体要素を用いたことで、自由度と積分点の増加に伴って当初の想定以上に計算コストが増加してしまった。そのため、現在は解析を進めながら、プログラムの改良を行っている状況である。それと並行して、今回開発した手法がどこまで微視的な破壊挙動を再現可能か検証したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
へき開破壊の起点となる微小き裂が発生する強度にカーバイドが影響することが知られている。そこで、本研究をさらに緻密なものにするために、提案した異方性損傷構成の材料パラメータにカーバイドの影響を反映する手法を開発する予定である。そのうえで、提案した異方性損傷構成則を用いた本解析手法の表現性能の限界について調査する予定である。併せて、前述のような並列計算、もしくは数値解析を安定化させる手法についても検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、今年度、最終的な研究成果を報告する予定であった学会が3月に予定されていたが、COVID-19の世界的流行によって次年度の12月に延期されたためである。
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