2020 Fiscal Year Research-status Report
GABA神経系と免疫系の相互作用解析に基づく統合失調症の病態解明
Project/Area Number |
17K17628
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
藤原 和之 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (20735154)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | GABA / 抑制姓神経伝達 / GAD67 / ゲノム編集 / ノックアウトラット |
Outline of Annual Research Achievements |
GABA神経系に障害を持つモデル動物を確立するため、引き続きGAD67ノックアウトラットの行動解析を実施した(GAD67はGABA合成酵素の一種である)。恐怖反応や恐怖記憶は、精神疾患に密接に関わりがある。そこで、GAD67ノックアウトラットの恐怖条件付け試験を行った。音刺激と電撃を同時に与えると、ラットは次第に音刺激に対してもすくみ行動を示すようになる。しかし、条件付けの過程においては、GAD67ノックアウトラットは音刺激に対してすくみ行動が低下するという特徴的な行動を示した。また、ラットは電撃を与えられた環境(実験箱)そのものに対してもすくみ行動を示すようになるが、GAD67ノックアウトラットで野生型ラットに比べて高いレベルのすくみ行動が観察された。一方、繰り返し実験箱に曝露することで恐怖記憶の消去を試みたところ、GAD67ノックアウトラットではすくみ行動が全く減弱せず、消去学習に顕著な異常が認められた。これらの知見は、GABAの減少が精神疾患に関連した行動を引き起こしうることの新たな証拠となった。本年度の成果も含め、GAD67ノックアウトラットを精神疾患モデル動物として論文発表した。 一方、本研究の本来の目標は、「GABA合成能の低下により脳内免疫担当細胞であるミクログリアの活性が変化し、精神疾患の病態に関連する」との作業仮説を検証することである。そこで、GAD67ノックアウトラットから脳を採取し、ミクログリア形態の解析も継続した。その結果、ミクログリア分岐のフラクタル次元が変化していることが明らかとなり、仮説が支持されつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究計画で使用するモデル動物を変更する必要が生じたこと、新規に作成したモデル動物(GAD67ノックアウトラット)のモデル動物としての妥当性・有用性の検討に時間を要し、当初計画していた内容が全体として遅延していた。 一方、確立されつつあったGAD67ノックアウトラットも、コロナウィルス感染拡大に伴い本学動物実験施設から飼育削減を求められ、さらに予定していた実験の実施が遅延した。しかし、その間にGAD67ノックアウトラットに関する論文を3報出版することができ、ミクログリアの解析に本格的に移行する準備は整いつつある。(Fujihara et al., Translational Psychiatry. 2020; Fujihara et al., FEBS Open Bio. 2020; Fujihara et al., Frontiers in Pharmacology. 2021)
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Strategy for Future Research Activity |
前項に述べたとおり、使用するモデル動物が確立し、組織学的な解析もスタートしている。すでに我々の仮説を部分的に支持する所見が得られているため、今後は当初予定していたモデル動物へのストレス負荷を行い、その行動およびミクログリア形態がどのように変化するかを解析していく計画である。また、実験スケジュールが遅れているため、いち早くGAD67ノックアウトラットの脳内で生じている現象を把握するため、網羅的解析(RNA-seq・メタボローム解析)も併用する計画である。
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Causes of Carryover |
本研究計画で使用するモデル動物を変更する必要が生じたこと、新規に作成したモデル動物(GAD67ノックアウトラット)のモデル動物としての妥当性・有用性の検討に時間を要したことにより実験計画に遅延が生じ、昨年度から全体のスケジュールが予定より遅れていた。さらにコロナウイルス感染症拡大のため、動物実験施設より飼育頭数削減を求められたため、本年度に予定していた実験を全て実行できなかった。 次年度は、新たに確立したモデル動物の組織学的な解析(必要物品:免疫組織化学に必要な抗体などの試薬)、生化学的な解析(必要物品:同じく抗体試薬や、 RNA-seqのキットなどの消耗品)を主に研究を遂行する計画である。
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Research Products
(5 results)