2017 Fiscal Year Research-status Report
フィードバック型超音波ドラッグデリバリ実現のための微小気泡の高感度その場検出法
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17K17634
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
江田 廉 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (40734273)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 気泡キャビテーション / 超音波援用ドラッグデリバリシステム / 高時間分解能観察 / フィードバックシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
超音波援用ドラッグデリバリシステムでは、微小気泡に対し強力超音波を照射することで気泡を圧壊し、あらかじめ気泡に付加させた薬剤を患部や細胞内へ効率よく取り込ませることが基本になるが、高効率化のためには気泡破壊に至るまでの2次超音波信号をその場で観測し、これをフィードバックすることで効率向上を図ることが重要になる。本研究は気泡からの信号をマイクロ秒オーダーの高時間分解能でその場観察し、従来の超音波イメージングには実現できない「時間的・空間的分解能を有する新規の気泡観測法」を実現する。本手法は気泡表面を修飾した機能性気泡を組み合わせることで癌の超早期発見が可能になるなど、気泡観測だけでなく、革新的な治療診断技術創出を拓く基盤技術になる。 平成29年度は以下の研究を行った。キャビテーション信号の高時間分解能の観測手法の開発のため、可視化システムの映像化原理の確立と気泡特性化計測への適用を行った。映像化原理の確立に関しては、信号をアレイ振動子で観察し、受信RFデータから波動の逆伝搬を行うことで、気泡キャビテーションの時間―位置平面での気泡ダイナミクスを可視化する方法を開発した。本手法を超音波造影剤Sonazoidに対し適用した結果、低音圧照射下では、信号の強度が小さいだけでなく、高調波と分調波からなるビート信号による周期的なパターンが観測され、高音圧照射時には気泡破壊による高調波、分調波以外の広帯域な信号成分による複雑なパターンが顕著に現れることが分かった。気泡特性化計測への適用では工業用の中空マイクロカプセルや、発酵培養させることにより細胞内にCO2を発生させる酵母細胞を観測した。本年度はデコンボリューションのWiener filter適用による空間分解能の向上を適用し、ラテラル方向の空間分解能0.34㎜を実現したが、本手法は臨床で求められる空間分解能を達成する方法と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の成果は、可視化システムの開発に留まらず、気泡特性化や細胞を使った計測など、応用開拓に向けた研究を推進できた点が挙げられる。まず、可視化システムの映像化原理の確立については、本手法の時間的・空間的分解能を有する特徴に基づいて、気泡のキャビテーションに特有な信号パターンを観測した。この方法では、時間―位置からなる2次元画像上に、キャビテーションのマイクロ秒オーダーでの時間発展とアレイのラテラル方向のキャビテーション・ダイナミクスを同時に観察できる。時間的分解能による特徴だけでなく、空間的にも特徴的なパターンを観測できた点は、従来の観測技術には示すことができない本研究の成果の一つとして挙げられる。また、応用開拓に向けた研究については、既存の造影気泡だけでなく、細胞に含まれる気泡からの信号の映像化にも成功した。この結果については現在解析中であるが、これにより細胞との相互作用を評価できる可能性があり、生体作用を示す信号を特定できればフィードバックシステム実現に向けて大きく前進することができる。また、細胞に含まれる気泡量は極微量であり、従来法よりも高感度な観測が可能であることを示せた点も本研究の大きな成果の一つとして挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降は、細胞を用いた薬剤・遺伝子導入への適用に領域を拡げて研究を進める。平成29年度の研究成果を展開し、可視化システムの機能性気泡への適用および生体応用を見据えた実験に取り組む。機能性気泡への適用では、薬学との連携により、分子標的能を有する気泡製剤を評価する。気泡径・シェル物性等の気泡の質的情報と本手法で得られる信号の統計量との比較により気泡の特性化を図る。さらに可視化技術をツールとする高感度な極微量気泡検出法の応用展開を図るため、細胞に取り込まれた気泡からの微弱信号検出および感度向上のためのフィルタ設計について検討する。 生体応用を見据えた実験については、これまでに得られた物理現象と生体作用との関連を得るため、血球由来の細胞や酵母細胞等、浮遊細胞を用いたファントム実験を行い、像再生結果の解析項目と生体効果が相関を示すパラメータを統計的に評価する。さらに構成した可視化システムを用いて医学を専門とする研究協力者とともに実験動物での評価および実験動物から採取した細胞を用いた評価を行い、可視化システムの超音波支援DDS における有効性を明らかにするとともに、本システムを用いたDDS の高効率化のための気泡制御技術について検討する。これら成果をまとめて内外の関連学会で報告する。
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Causes of Carryover |
研究進捗との調整により物品購入に遅れが生じたが、平成30年6月中に次年度使用額としての請求分は執行済みとなる見込み。
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