2017 Fiscal Year Research-status Report
配位高分子内制限空間における水の特異性評価と分離・計測への応用
Project/Area Number |
17K17635
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
半田 友衣子 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (20586599)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 金属—有機構造体 / Fe-ベンゼントリカルボン酸 / テトラキスリン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度は、Fe(III)とベンゼントリカルボン酸(BTC)が形成する配位高分子(Fe-btc)に水分子を安定的に内包する条件を探索し、Fe-btc粒子を液体クロマトグラフィーのカラムに充填してFe-btcへの水の吸着挙動の解析を行った。また、Plabstらの報告(J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 18112)に基づいてテトラキスリン酸(H4L)とNa、Laが形成するNaLa(H4L)を合成し、アルカリ金属イオンに対するイオン交換特性を調べた。 Fe-btcの合成において、最も広く用いられているFe粉を利用する方法では、結晶径が数百nmと小さく、さらにばらつきが大きかったため、液体クロマトグラフィーの固定相として不適当であった。そこで、Fe(II)を用いる合成法を採用し、サイズがおよそ2μmで、比較的ばらつきの小さい結晶を得た。得られたFe-btc結晶をカラムに充填して水を飽和させたヘキサンを通液し、溶離液中の水濃度を測定した結果、Fe-btcに水が凝集することが示唆された。配位高分子を用いる液体クロマトグラフィーにおいて、移動相組成と固体細孔中の溶媒組成の違いを考慮する必要があることがわかった。また、芳香環を有する配位子で形成する配位高分子における分子吸着は、しばしば疎水性相互作用で議論されるが、無極性溶媒よりも水との親和性が高い系があることが明らかとなった。 NaLa(H4L)におけるイオン交換では、Naとアルカリ金属イオンの交換が起こる。高濃度溶液中におけるイオン交換選択性は、K+>Li+>Rb+>>Cs+であった。興味深いのは、Na型からイオン交換で得られたK型配位高分子は、細孔内の水が脱水した構造であることが示唆された。これは、細孔内の水分子がイオン交換反応に関与していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
29年度は、Fe(btc)を固定相とする液体クロマトグラフィーの測定を行う予定であったが、実際には、Fe(btc)を充填したカラムを利用した種々の化合物の保持挙動の測定には至らなかった。進捗が遅れた理由としては、いくつかの報告に基づいてFe(btc)合成を行ったが、再現性がなく、カラムに充填するために求められる大きさとサイズ分布および安定性を有する結晶粒子を調整するのに時間を要したためである。 テトラキスリン酸配位子が形成するMLa(H4L)におけるイオン交換では、骨格構成要素(金属イオンまたは配位子)を変化させてイオン交換特性を比較する予定であったが、実際にはNaLa(H4L)の実験のみ行った。進捗が遅れた理由としては、配位子合成に時間がかかってしまったことと、室温でのイオン交換反応が遅く、平衡論での議論をする実験条件の探索が必要であったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は、1) Fe(btc)への水の凝集の定量的評価と、水を内包したFe(btc)に対する物質保持挙動の解明、2)テトラキスリン酸が形成するMLaH4L(M=Li, Na, K, Rs, Cs)でのイオン交換特性の評価と、細孔内水とイオン交換反応との関係の解明、に焦点を当てて研究を進めていく予定である。 1)では、ヘキサンなど無極性溶媒中に溶解した微量の水のFe(btc)への凝集を定量的に求める。また、ヘキサンなど水と相互溶解しない溶媒をクロマトグラフィーの移動相として用いた際に、細孔内の水が安定的に存在する条件を探索する。その後、有機相/細孔に内包された水と水/細孔に内包された水の系でクロマトグラフィー測定を行い、有機相/バルク水での物質分配定数を利用して細孔内に内包された水への物質分配挙動の評価を試みる。 2)では、MLa(H4L)(M=Li, Na, K, Rb, Cs)におけるイオン交換等温線を作成し、それをもとにKielland プロットやvan’t Hoff プロットの解析を行う。粉末X線構造回折で結晶構造を調べることにより、水和と脱水和構造についても議論できる可能性があり、イオン交換選択性との相関を解析する。
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