2017 Fiscal Year Research-status Report
CT画像を用いた椎体の形態解析による年齢推定法の検討
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17K17643
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千葉 文子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (90724972)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 法医学 / 法人類学 / 個人識別 / 年齢推定 / 椎体 / 骨棘 / 圧迫骨折 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は予備的検討として、まずは圧迫骨折好発部位である下部胸椎から上部腰椎について検討した。当初の研究計画では若年者と高齢者の比較のために30さ歳代及び70歳代でそれぞれ10例ずつ骨棘及び圧迫骨折を検討する予定であったが、計測値の散布図からは有意な結果が得られなかったため、評価部位を第12胸椎に絞り、評価項目に計測値だけでなく形態学的評価も加えるなど研究計画を変更した。 男性30例(20歳から83歳、平均50.5歳、標準偏差20.54)、女性30例(20歳から81歳、平均50.9歳、標準偏差19.9)を用いて再検討を行った。軸位断面の観察では、椎体の上下面と軸位断面が並行になるように任意断面を設定した。計測値としては椎体上下面の前後径、左右径、骨棘が形成されていれば最大突出部から本来の椎体辺縁に降ろした法線の長さを計測し、また形態的評価として椎体の辺縁に対し、骨棘の形成の及ぶ範囲を5段階でカテゴリー分類を行った。矢状断では、最短前後径と椎体前端(A)、中央(C)、後端(P)での上下径をそれぞれ計測し、臨床的な椎体骨折判定基準に準拠して圧迫骨折の有無(A/P<0.75, C/A or C/P<0.8を圧迫骨折と定義する)を評価した。冠状断では最短左右径を計測した。さらに、形態的評価として矢状断及び冠状断で上下椎体が骨棘により癒合しているかどうかをスコア化して検討した。 各計測値及びスコアと年齢の散布図を作成し、単回帰分析を行った。椎体上下面での骨棘の長さ、骨棘形成の及ぶ範囲のスコア分類及び上下椎体の癒合の程度が比較的年齢との相関が高く観察された。また、圧迫骨折は回帰分析の相関の程度は比較的弱く観察されたが、若年では頻度が低く観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予備検討の結果が思わしくなかったことから、評価項目を多く再設定したため計測に時間がかかり進捗がやや遅れている。また、計測値を用いた評価を主体に考えていたが、予備検討の結果では肉眼的分類に良い結果が得られたので、こちらも併せて評価項目に加えることとした。 また、当初の研究計画にあった脊椎及び椎体の三次元解析については、個々の椎体の形態が複雑なため、予備検討の段階で加齢に伴う変化が難しいことが考えられた。さらに、脊椎の形態については撮影時の姿勢による影響が大きく、やはり三次元解析が難しいことが予測された。三次元解析に代わる画像評価についても次年度には検討したい。
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Strategy for Future Research Activity |
CT任意断面再構成画像を用いて、予備検討で比較的良い結果が得られた以下の項目(1から3)について検討する。評価項目の変更などにより進捗がやや遅れていること、評価項目の増加により計測に想定以上の時間を要することなどから、全椎体においての評価を中止し、より加齢性変化が強く出ることが予測される下部胸椎から上部腰椎(第9胸椎から第2腰椎)において評価を予定している。 1. 椎体上下面での骨棘の最大幅(最大突出部から本来の椎体辺縁に降ろした法線の長さ) 2. 骨棘形成が及ぶ範囲のスコア(形成なし=0、椎体辺縁の1/4周未満の骨棘形成=1、椎体辺縁の1/4周以上半周未満の骨棘形成=2、椎体辺縁の半周以上3/4周未満の骨棘形成=3、椎体辺縁の3/4周以上の骨棘形成=4) 3. 矢状断及び冠状断での上下椎体の癒合の程度のスコア(癒合なし=0、癒合が開始=1、骨濃度で完全に癒合=2) また、これら評価項目に加えて若年者で発生がほとんど認められず、年齢推定のカットオフ値として利用可能性が示唆された圧迫骨折(矢状断での椎体前端(A)、中央(C)、後端(P)での上下径及びこれらを用いた圧迫骨折判定結果)についても検討を予定する。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画にあった脊椎及び椎体の三次元解析については、個々の椎体の形態が複雑なため、予備検討の段階で加齢に伴う変化が難しいことが考えられた。さらに、脊椎の形態については撮影時の姿勢による影響が大きく、やはり三次元解析が難しいことが予測された。申請していた予算の大部分が三次元解析に関わるソフトの導入に用いることを予定していたが、予備検討の段階で有意な結果が得られない可能性が出てきたため、ソフト購入を一旦見送り、慎重に再検討しているため、次年度使用額が0より大きくなっている。
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