2018 Fiscal Year Research-status Report
CT画像を用いた椎体の形態解析による年齢推定法の検討
Project/Area Number |
17K17643
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千葉 文子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (90724972)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 年齢推定 / 椎体 / CT |
Outline of Annual Research Achievements |
二次元画像上での椎体加齢性変化の評価項目の検討のために、骨棘、椎体架橋形成、椎体の形態変化について散布図を書き、単回帰分析を用いて予備的検討を行った。その結果、骨棘形成を含む椎体の形態変化により、椎体の前後径や左右系、さらに前後径と左右径の比や、左右径や前後径の最大値と最小値の比に変化をきたすことが当初予想されたが、検討の結果いずれも年齢と有意な相関を認めず、年齢推定に有用ではないことが示唆された。 一方で骨棘長を計測では比較的良い相関が得られたが、検査者間誤差が統計学的に有意に大きく、再現性の確保が非常に困難な結果が得られた。骨棘長に関しては、長さに応じたカテゴリー分類(骨棘長の指標をPとし、骨棘形成なしをP0、0㎜<骨棘≦2㎜をP1、2㎜<骨棘≦4㎜をP2、4㎜<骨棘≦6㎜をP3、6㎜<骨棘≦8㎜をP4、8㎜<骨棘をP5とした)を行うことで年齢と比較的良い相関が得られた。また、骨棘形成の程度のカテゴリー分類と、圧迫骨折数の総和についても比較的良い相関が示唆された。今後は事例数を増やし、年齢推定法を検討していきたい。 一方、個々の椎骨の三次元的形態を評価するための予備的段階として、CT再構成画面上で椎骨の抽出を試みた。骨棘が形成され、また、圧迫骨折が形成される椎体部を評価するために椎弓部を除去しての評価を試みたが、CT三次元画像上で椎弓と椎体を手動で分離し、なおかつ再現性を保つことは困難であった。 さらに、高度の骨棘形成を伴う椎体は互いに骨性に癒合を認めていることもあり、個々の椎骨を分離して三次元画像上での評価を行うことは、本研究の時点で最終的に困難と判断した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
二次元画像上での椎体加齢性変化の評価項目の予備的検討のために、男女各30例の第12胸椎を用いて骨棘、椎体架橋形成、椎体の形態変化について散布図を書き、単回帰分析を用いて検討した。 椎体の形態変化を評価する目的で、椎体上下面の前後径および左右径、椎体正中の矢状断および冠状断を用いて最短前後径および左右径を計測し、椎体の上下面での前後径と左右径の比、椎体の左右径および前後径の最大値と最小値の比を計算したが、椎体の形態変化の評価項目はいずれも年齢の相関をほとんど認めず(単回帰分析における決定係数R2約0.未満)その後の検討項目から除外した。 その他、骨棘を評価する目的で椎体上下面の骨棘最大突出部から椎体海綿骨の辺縁まで下ろした垂線の長さ(㎜)をCT任意断面上で電子カーソルを用いて計測し、pとした。また、椎体架橋形成の指標として、上下方向の骨棘形成に伴う架橋形成の程度を3段階に分類し、B0からB2のカテゴリー分類を行った。これら項目は予備的検討で比較的良い相関の程度(単回帰分析における決定係数R2約0.3から約0.5程度)を示し、加齢によって増加することが知られている圧迫骨折(F)を加えてその後の検討項目とした。 男女各50例の第9胸椎から第2腰椎を用いて、各椎体の上記p、B、Fの和をそれぞれtotal p, total B, total Fとして年齢との相関を評価し、また、検査者間誤差の評価を目的として別の測定者による30例の再測定を行ったところ、骨棘長は検討項目の中では年齢と比較的良い相関を示したが、検査者間誤差が強い結果が得られた。骨棘長を計測値ではなく、カテゴリー分類(骨棘長の指標をPとし、骨棘形成なしをP0、0㎜<p≦2㎜をP1、2㎜<p≦4㎜をP2、4㎜<p≦6㎜をP3、6㎜<p≦8㎜をP4、8㎜<pをP5とした)とすることで測定の再現性を確保することに成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討の結果、椎体の加齢性変化の評価項目として、以下の項目が比較的有用であり、なおかつ再現性があることが示唆された。 ・骨棘長の指標total P(各椎体において骨棘形成なしをP0、0㎜<骨棘≦2㎜をP1、2㎜<骨棘≦4㎜をP2、4㎜<骨棘≦6㎜をP3、6㎜<骨棘≦8㎜をP4、骨棘8㎜以上をP5とし、評価した椎体におけるPの和) ・架橋形成の指標total B(各椎間において骨棘形成を認めないもの、または骨棘形成を認めるが上下方向で骨棘同士が近接しないものをB0、隣接する椎体の骨棘同士が近接するものをB1、隣接する椎体の骨棘同士が癒合するものをB2とし、評価した椎間におけるBの和) ・圧迫骨折の指標F(椎体前方の上下長A、椎体中央の上下長C、椎体後方の上下長Pを計測し、椎体骨折評価基準をもとにA/P<0.75、 C/AまたはC/P<0.8、A, C, Pが上下の椎体と比較して20%以上の減少、のいずれかを満たす場合を圧迫骨折陽性とし、各椎体の圧迫骨折数(F)の和) 今後はこれら項目の事例数を増やし、実際の年齢推定に応用可能かどうかを検討することを予定している。
|
Causes of Carryover |
初年度に行った予備検討の結果、年齢推定の十分な評価が不能であった。評価項目を多く再設定し、各椎体について19箇所の計測値および評価項目を設定し、さらにそこから算出される数値約30種類についてそれぞれ年齢との相関関係を評価したため、計測および評価に時間がかかり進捗が遅れたことに加え、当初の研究計画にあった脊椎及び椎体の三次元解析については検討の結果実施が難しいことが判明した。新規の評価項目の再検討に時間を要することと、骨の肉眼的観察に必要な、骨を切断する機械の老朽化も認めたことから、申請期間を延長し、機械を購入して新たな項目を検討することとした。
|