2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K17659
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
入江 薫 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (20789169)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経済統計学 / ベイズ統計学 / 時系列分析 / 状態空間モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から実施している研究は主に二つあり、それぞれ大規模な計数データの分析の理論と応用に関するものである。一つは計数データ分析のための統計モデルの基礎となるパラメトリックな分布、特にガンマ分布やベータ分布の形状パラメータの推定に関する共同研究である。既存手法を用いると、最尤法では推定量を陽に求めることができず、一方でモーメント法では推定量の分散が大きくなってしまう。この問題に対し、解析的な表現を持ち、なおかつ効率的な推定量を与えるスコア調整法を提案した。これらはより複雑な問題、すなわちポアソン・ガンマ型や二項・ベータ型の階層モデルの推定においても有効であり、本研究課題である大規模計数データの分析という観点からも重要な結果である。研究の成果は二本の論文にまとめられ、すでに国際学術誌へ投稿済みである。 もう一つの研究は、ウェブサイトへのアクセスログやタクシー配車サービスへの需要量のデータなど、高頻度で観測される計数時系列データの逐次的な事後分析に関する共同研究である。手法の提案及び実データの分析など研究の中核となる部分は昨年度中に完了していたが、今年度は既存のモデル(割引因子が定数の場合)や既存の計算手法(MCMC法)を用いた場合の結果との比較を行い、提案する統計モデル・計算手法の意義を明らかにした。さらに先行研究のサーベイを詳細に行い、上述の研究成果と合わせて論文にまとめた。論文は国際学術誌へ投稿され、現在査読を受けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた研究テーマはほぼ完了し、論文は査読を待っている状態である。残りの年度では査読結果への対応に加え、新たに発展的な研究テーマを追求することが可能となった。よって、研究の進行状況は予想以上であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年4月現在、複数の論文を投稿し、査読を受けている状態である。それらの査読結果に応じて追加的な研究・分析を行う必要がある。査読結果が明らかになり次第、それらに優先的に対応する。 査読の完了を待つ間、上述の研究から新たに立ち上がった問題に取り組む。高頻度で観測される計数時系列データの研究の主たる目標は逐次的分析であり、それを可能にするモデルは本質的には一変量であり、共変量を明示的に持たない場合に限られていた。より複雑な問題、すなわち多変量のポアソン回帰型の計数時系列モデルのベイズ分析は現在盛んに研究されているが、これまで行ってきた研究の知見を活かしてこの新たな問題に取り組む。すでに学内の研究者・学生と研究プロジェクトを立ち上げており、本研究課題の残り期間である二年以内をめどに研究成果を公表することを目標としている。
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Causes of Carryover |
年度当初には海外に拠点を置く共同研究者との研究打ち合わせのため、訪日のための旅費支出を予定していた。しかし当該の研究者は学会の招待講演者として別の団体からの支援で訪日することになったため、その分の旅費支出を年度内に使用することが困難になった。新年度中に再度研究打ち合わせを行う予定であり、次年度使用分は当該研究者の訪日または申請者の訪問の旅費として使用予定である。
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Research Products
(6 results)