2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K17660
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 雅裕 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10589295)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 粒子法 / 熱力学第二法則 / 角運動量保存 / 表面張力 / 溶融凝固 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,以下のような研究を遂行した。 研究項目(1)では,熱力学的健全性を有する粒子法の開発を行なった。粒子法により計算を行う中で,粒子の飛び散りなどにより計算が破綻することを避けるためには,粒子系として力学的エネルギーが単調減少すること,すなわち,熱力学第二法則を満たしつつ計算することが重要であり,そのための粒子法の計算モデル開発を行なった。また,新しく開発した粒子法を用いて,静水圧計算,液滴が伸びる計算,ダム崩壊計算などを行い,開発した手法の有効性を確認した。 研究項目(2)では,角運動量保存性のある粒子法に関する計算モデル開発を行った。粘性が大きい流体や固体の剛体的振る舞いを計算するためには,角運動量保存性が重要であるためである。本年度は,粘性が大きい流体の振る舞いを実際に計算し,角運動量保存性がある場合とない場合を比較を行なうことで,角運動量保存性がある手法の重要性を確認した。また,この成果は第22回計算工学開講宴会にて発表した。 研究項目(3)では,表面張力の計算モデル開発を行った。表面張力は液体の表面のみに働く保存力であるという性質を満たす粒子法の計算モデルを開発した。この性質は,物理的な性質の一致のみならず数値安定性の観点からも重要である。この成果は,国際会議Paricle 2017にて発表した。 研究項目(4)についても,溶融凝固の計算モデルについても基礎的な検討を進め,粘性の変化により溶融凝固を表現できることを確認し,研究成果を国際会議ICONE 25で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で挙げた研究項目(1)~(4)のうち(1)の熱力学的健全性については,研究計画に従って基礎的な検証を進め,成果をまとめる段階に入っている。一方,(2)の角運動量保存則については,基礎的な計算を行うことで手法の重要性を再確認できているが,検証のための実験についてやや進捗が遅れいることを考慮し,他機関で行なう実験と比較することもあわせて準備を整えている。また,(3)表面張力モデル,(4)溶融凝固モデルについては,平成30年度に開発を計画していたが,基礎的な検討を行うことで開発の方向性を確認している。したがって,おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目(1)については,平成29年度の研究成果を投稿論文にまとめて公開する。また,研究項目(2)については,実験との比較による検証を進める。具体的には,JAXAの協力を得て,潤滑グリースの実験データをいただき,開発した計算モデルを用いた計算と比較する計画である。一方,研究項目(3)の表面張力については,理論解が分かっている問題を計算して,理論と計算を比較することにより検証を進める。また,研究項目(4)については,計算モデル開発とあわせて実験との比較による検証を行うため,次年度から実験準備を行なう。
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Causes of Carryover |
開発した粒子法の計算モデルの検証のための実験に関して,他機関が行なう実験を利用するなどの検討を行なったため,おもに物品費に関して,本年度から次年度に繰り越し請求することとなった。
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Research Products
(3 results)