2017 Fiscal Year Research-status Report
未承認医療技術への患者アクセスのあり方に関する研究
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17K17665
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
中田 はる佳 国立研究開発法人国立がん研究センター, 社会と健康研究センター, 研究員 (10592248)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 未承認薬 / 未承認医療機器 / コンパッショネートユース / 臨床試験 / 治験 / 患者申出療養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、先行研究および事例調査のための関連情報収集を中心に行った。 未承認医療技術への患者アクセスをめぐって制度が先行しているアメリカの状況については以下の情報を整理した。1987年に研究用の薬を治療使用するための法制化して以降、未承認医療技術への患者アクセスが制度として確立されている。これは、規制当局であるFDAが把握できる範囲で未承認医療技術の患者への使用を認める枠組みである。一方で、未承認医療技術へのより速い患者アクセスを求めて、FDAの関与を介さずに、患者が医師を介して直接製薬企業などに未承認薬の使用を求める制度(Right-to-try)を求める声が高まっている。2018年5月現在、40の州でRight-to-try法(州法)が導入されている。内容は州ごとに異なるが、おおむ次のような内容が含まれる。1)末期状態で、既存治療がない患者であること、2)医師の推薦があること(第1相試験終了を条件とするものも)、3)本法に沿って患者の要請に応えた医師は民事免責、4)企業の保護として民事免責の規定を入れる州もある。Right-to-ty法は、患者の治療選択肢を広げるという側面がある一方、規制当局の関与なく患者にリスクを負わせる可能性や既存の薬事制度を揺るがす可能性が指摘され、賛否がわかれている。アメリカではこれを連邦法にする動きもあったが、不調に終わっている。 日本では、類似の制度として、治験・臨床試験のほかに、人道的見地から実施される治験(拡大治験)、患者申出療養制度が新たに設立された。しかし、拡大治験は、2016年1月の開始から2017年7月末までに11件、患者申出療養制度においては2016年4月の開始から現在まで4件の技術が承認されたに過ぎない。また、臨床研究法の影響も懸念される。今後、更なる課題整理と患者アクセスの在り方の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画立案段階で予想していたより、検討対象としていた「患者申出療養評価会議」の開催が多くなく検討材料の収集に時間を要した。そこで、収集対象とする資料の範囲を拡大しながら研究を遂行する方針としたため、進捗が予定よりやや遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
調査対象としていた患者申出療養評価会議の開催は今後も多くないと考えられる。本制度自体の課題も徐々に指摘されているところであり、今後はそれらの情報収集も行いつつ、調査計画立案に取り組むこととする。
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Causes of Carryover |
研究の進捗が予定より遅れたため、参加学会や購入予定物品の購入が遅れた。次年度は、早い段階で、本年度予定していた物品を購入し、学会参加計画を見直して次年度使用額を適切かつ効率的に支出する。
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