2017 Fiscal Year Research-status Report
硬骨海綿の骨格に記録された海水中二酸化炭素濃度の復元
Project/Area Number |
17K17669
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 健太郎 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (20792766)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 海洋酸性化 / 炭酸カルシウム / 二酸化炭素 / 石灰化生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 過去の海洋環境, 特に海水pHと溶存二酸化炭素濃度の推定を目的としている.過去の海洋環境を記録するサンプルとして硬骨海綿の炭酸塩骨格に着目し,過去のpHおよび溶存二酸化炭素を推定するため,骨格のホウ素同位体比およびホウ素濃度を測定する.今年度は化石の硬骨海綿のホウ素同位体比を測定した. 沖縄県の海底洞窟で採取された堆積物中に埋没していた硬骨海綿の化石を入手した.サンプリングサイトの堆積速度はすでに決定されており, 化石硬骨海綿の年代も推定できる. 今回入手した化石硬骨海綿は計11個体で,およそ0.1~2kaの年代に生育していたと推定された.化学分析に先立ち続成作用による変質の有無を確認するため, X線回折で骨格の鉱物組成と走査型電子顕微鏡で骨格微細構造を観察した. 粉末にした骨格を洗浄し硝酸で溶解した後, 骨格サンプルのホウ素同位体比をマルチコレクター型誘導結合プラズマ質量分析計を用いて測定した.ホウ素同位体比は炭酸塩骨格が形成された時期のpHを記録することが知られており, 本研究でもホウ素同位体比から過去の海水pHを見積もった. その結果から, 化石の硬骨海綿試料が生息していた時代の沖縄周辺海水のpHは現在の海水pHとほぼ同じ値で,大きな変動は無かったと示唆された. 今後は水温の影響を検討するため,同一試料の酸素同位体比や微量元素濃度(ストロンチウムやマグネシウム)も測定する.また, 沖縄県とは水温が異なる海域で硬骨海綿を探索する.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に従い,硬骨海綿の化学分析を実施したことから概ね順調に進展していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い,今後も化石および現生試料のホウ素同位体比を測定する.また同一試料のホウ素濃度も測定する.得られたデータから過去の海洋のpHや溶存二酸化炭素濃度を推定する.研究計画には記載していなかったが, 海綿試料の炭素・酸素同位体比も測定し過去の水温変化も検討することにした.
|
Causes of Carryover |
当初の計画では研究設備や消耗品を購入する予定だった.しかし,現在所属している研究室の設備や消耗品を利用できたため,今年度予算の物品費の支出が抑えられた.また,技術補佐員を雇用し前処理などを委託する予定だったが,適した人材が見つからず初年度は自ら前処理など行った.そのため,人件費の支出も抑えられた.今年度の余剰額と合わせ,翌年度の助成金は消耗品・研究設備の他に14C年代の委託測定・新規サンプルの探索・技術補佐員の雇用などの費用として使用することを検討している.
|