2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of a new particle-based modelling method and determination of three-dimensional dark matter structures in a dwarf galaxy
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17K17677
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 茂樹 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (80791053)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 矮小銀河 / 粒子モデル / マルコフ連鎖モンテカルロ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、矮小銀河の暗黒物質ハローの密度分布形状を3次元的に決定するために、新たな手法を開発し、それに実際の観測データを適応することで、近傍矮小銀河の暗黒物質の状態を明らかにすることである。新たな手法とは、対称性を仮定しない3次元的な粒子モデルの構築法として近年注目されている、Made-to-measure法(M2M法)にマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)を組み合わせ、暗黒物質の分布形状をパラメータサーチする方法である。 研究の現状は、計算コードの開発はほぼ完成した段階に達した。3次元的な暗黒物質ハローの中で粒子の軌道を計算してM2M法を行い、計算速度などは概ね期待通りのパフォーマンスであった。テストとして、仮想的に作り出した3軸不等な矮小銀河モデルを用いて試験を行ったが、問題点も見つかった。 その問題点は、使用する星の密度分布のデータ(測光観測データ)と速度分布のデータ(分光観測データ)が一致している場合だと、天球面上に投影された暗黒物質の分布は精度よく決定できる一方で、暗黒物質分布の奥行き方向の決定が困難であるということである。この問題の原因は、測光・分光データの位置は銀河の中心付近に密集しており、データが疎になる銀河外延部ではパラメータ決定精度が悪くなることであることが推測される。銀河外延部での測光データの不足にせいで、暗黒物質ハローの半径を十分な精度で決めることが出来ず、結果として、パラメータ間の縮退が解けず、暗黒物質の奥行き方向の傾き角度が決定できないのだと考えられる。 そこで、計算コードを改良し、測光・分光データの分布を独立に変えられるようにした。そうすると、銀河外延部においても十分なM2M法サンプル粒子が必要になり、当初の想定以上に計算規模が膨れ上がってしまった。現在、この問題を解決するべく、問題を解決するのに最適な分光データの分布を探っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の問題点により、当初の予定よりも計算規模を大きくせざるを得ない状況になってしまった。それでも実行可能な計算規模であるとは考えているが、計算量の増大は手法のテスト計算すら困難にしてしまう。現在、私が普段使用している大型計算機においても、テスト計算を一回行うのにおよそ2週間程度を要してしまっている状況である。またその都度、コードの細かな設定を見直して、最適な設定を探さなくてはならないので、実際には何度もテストを繰り返さなくてはならない。計算規模の増大によって、作業効率が非常に悪くなってしまった中、本来の業務に関する研究でも大規模な計算を並行して行っているため、どうしても計算資源の不足に悩まされてしまっている状況である。 計算コードの高速化なども十分に行っているが、現在の方法ではこれ以上の劇的な計算の高速化は難しいと考えている。計算コードを大きく変更し、より効率的な方法を探してテストすることもできるが、それでも根本的な解決にはかなわないだろうと思われる。 非効率ながらもテストを繰り返し、徐々にではあるが、最適な設定と櫃最低限の計算量を見積もるために実験を繰り返している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の見積もり以上に計算規模が増大してしまってはいるが、次年度からは私が使用している大型計算機がリプレイスされ、計算機自体の性能が飛躍的に向上するとされている。そうすれば、作業の効率も改善され、手法の完成までどうにかこぎつけることも期待できるだろう。 また、当初は想定していなかったが、視線方向のみの速度情報を用いるのではなく、視線垂直方向の速度も使えば、現状の計算コードでも目的の達成は可能かもしれない。視線垂直方向の速度情報は、実際の観測から得ることは非常に困難である。しかし、将来的にはGaia衛星の観測がすべて終了すれば、観測精度は悪いものの、ある程度は得られることも期待できる。これによって、実際の観測においてどのようなデータがそれくらいの精度・サンプル数で得られれば、矮小銀河の暗黒物質の分布形状が決定できるのか、観測提案をするという方向も視野に入れながら今後の研究を行っていきたい。 現状のコード開発段階で予想できることは、現在使用可能な実際の観測データを用いた場合は、測光データの不足から矮小銀河の暗黒物質の分布形状の決定は(当初から想定はしていたが)困難である可能性も大いにあるということである。もしも本来の計画の遂行が困難であると思われた場合は、申請時の研究計画にあるように、必要な観測精度やサンプル数を見積もり、将来観測での実現可能性を議論する方向にもっていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が発生した理由の最も大きなものは、当初購入予定であった専用計算機の購入がまだだからである。これは計算コードの開発が完了し次第購入する予定であったが、計画に幾分の遅れが生じたために、まだ購入していない状況になっている。研究の進捗状況でも述べたが、計算規模の増大によって、より計算機の必要性が増したので、次年度は早急に計算機の購入を行いたいと考えている。おおよそ250万円程度の使用を見込んでいる。 また、協力研究者の所属先へ議論に行く旅費も計上していたが、幸いにも協力研究者の方から来日する機会があったので、その際に必要な議論を行った。次年度は、協力研究者を招聘するか、私が先方に長期で滞在する予定であり、大きな旅費が必要となると思われる。こちらにはおよそ50万程度の出費を見込んでいる。
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Research Products
(9 results)