2017 Fiscal Year Research-status Report
The role of Wnt signaling underlying the regulation of undifferentiated spermatogonia
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17K17690
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
高瀬 比菜子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, テニュアトラック助教 (40754528)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Wnt / 精子幹細胞 / 未分化型精原細胞 / セルトリ細胞 / ライディッヒ細胞 / 精子形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、精巣内の体細胞群、すなわちセルトリ細胞とライディッヒ細胞からのWnt分泌が、マウス精子幹細胞制御に果たす重要性を明らかにすることを目標にしている。 これまでの申請者らの研究から、精子幹細胞を含む未分化型精原細胞で古典的Wnt シグナルが活性化しており、これらの細胞増殖にWnt シグナルが寄与する証拠を示した。しかし、Wntの産生細胞やWntシグナルの活性化機構については不明である。そこで、以下の課題について研究を計画し実行した。 (1) 体細胞由来Wnt の機能的重要性の検証:セルトリ細胞・ライディッヒ細胞特異的にWnt分泌の抑制が可能なマウス系統(以下Wls cKO)マウスを作出し、表現型解析を行った。成体のWls cKOマウスは精子形成異常を来たし、精巣重量の減少および疎な精細管数の増加が観察された。野生型の雌との交配実験では妊性の低下が認められた。精巣あたりの精原細胞数や分化マーカーの発現については現在解析を進めている途中だが、生後6日目以降で精原細胞の細胞分裂が抑制傾向にあることが判明した。以上の結果から、セルトリ細胞およびライディッヒ細胞由来のWntシグナルは、精子幹細胞を含む未分化型精原細胞の細胞増殖に機能すると考えられる。 (2) Wnt シグナルを調節する補助因子の役割:申請者は精細管の傍腔区画特異的にDkk4が、基底区画特異的にRspo4が発現していることを報告した。これらの遺伝子の機能を明らかにするため、CRISPR/Cas9システムを用いてDkk4・Rspo4のノックアウト(KO)マウスの作出を行った。標的遺伝子に対するgRNAの設計と顕微注入を終え、Dkk4では2系統、Rspo4では3系統の変異マウスが得られている。現在はヘテロ変異マウス同士の交配を行い、ホモ変異個体(KO)の作出を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画においては、変異マウス系統の作出および導入が最も時間がかかるポイントとなる。これまでに計画していた変異マウスの作出は順調に進んでいる。特にWls cKOマウスについては、危惧されていた全身性の重篤な表現型は観察されず、精巣に特異的な表現型を示したことから、今後の詳細な解析により順調な研究の進展が期待される。したがって、本年度の研究の達成度はおおむね良好であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度には、得られたマウスの表現型を精査し、精子幹細胞制御に果たす体細胞由来Wntの重要性について明確に示すことを目指す。 (1) 体細胞由来Wnt の機能的重要性の検証:本年度中に既にWls cKOマウスの表現型解析を開始しているが、サンプル数が不足している実験について追加実験を行い、データの信憑性を担保する。精子幹細胞を多く含む細胞集団を標識する細胞マーカーと、広く精原細胞を標識する細胞マーカーを指標に用い、これらの細胞増殖率・分化マーカーの発現を対照群と比較する。加えて、HTVi(hydrodynamic tail vein injection)法によりWnt6をマウス肝臓にて過剰発現させ、血中に高濃度に分泌させる。精巣においてWls cKOマウスと逆方向かつ整合性のある表現型が見られるか検証する。 (2) Wntシグナルを調節する補助因子の役割:F1のヘテロ接合体を兄妹交配し、Dkk4・Rspo4のノックアウトマウス系統のホモ接合体を作出する。KO効率を確かめるためにはin situ hybridizationによるDkk4・Rspo4のmRNAの検出、または抗体染色を用いる。 (3) Wnt受容細胞のトランスクリプトーム解析:当初の計画では、培養細胞を用い、培地へのWnt添加により発現変動する遺伝子をRNA-seqにより抽出することを想定していた。しかし、より生体の環境に近い条件で解析を行うため、マウス精巣からWntを受容した未分化型精原細胞をセルソーターにて分取し、RNA-seqを行うこととする。来年度は、この実験に必要なWntレポーターマウスの作出とセルソーターでの細胞分取の条件検討を行う。
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Causes of Carryover |
産前産後の休暇および切迫早産による病気休暇を取得したことにより、長期的に研究を中断をせざるを得ず、研究計画そのものの大幅な変更が必要になった。応募時には想定していなかった中断により平成29年度の支出は減少した。別途提出した研究実施計画の変更申請の通り、中断により平成29年度に行う予定だった実験計画の一部を順延し、その解析費用を平成30年度と平成31年度に使用予定である。
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Research Products
(2 results)