2018 Fiscal Year Research-status Report
顎顔面形態に関する胎児期から成人期までのライフコース研究
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17K17697
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
保田 裕子 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 特任助教 (20707476)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 不正咬合 / 出生コホート研究 / 顎顔面形態 / ライフコースアプローチ / 口腔関連QoL |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、出生コホート研究により、一般集団における思春期の子どもの顎顔面形態を分析し、妊娠期ならびに小児期の社会・環境要因との関連性を検討すると同時に、不正咬合が成人期の健康に与える影響を明らかにすること、さらに既に得られている同一人種であるモンゴル人の顎顔面軟組織形態と比較検討することを目標としている。本研究は山梨県で行われている出生コホート研究「甲州市母子保健縦断調査」の追加調査として、山梨県甲州市の全中学生を対象として行われている。評価項目は以下の項目である。 1.妊娠期の母体の環境が思春期の子どもの顎顔面形態に与える影響について評価する(1)不正咬合の実態調査(2)妊娠期及び小児期の社会・環境要因のデータとリンケージを行い、不正咬合の発症要因に関して疫学的手法を用いて解析する。 2.顎顔面形態が思春期の子どもの健康状態に与える影響について調査し、不正咬合の形態・機能的な問題点及び審美・社会的問題点が思春期の子どもの身体及び精神の健康状態に与える影響について疫学的手法を用いて解析する。さらに実態調査を行った集団を成人期まで追跡調査することにより、思春期の不正咬合が成人期の健康状態に与える影響を評価する。 3.日本人の思春期における顎顔面軟組織形態に関するデータベースの構築を行い、研究代表者等により、既に得られているモンゴル人の顎顔面軟組織形態の三次元データと比較検討を行い、同一人種であるが異なる社会的要因・生活環境等が顎顔面形態へ与える影響について評価する。 平成30年度は、これまでに行なった不正咬合の実態調査のデータと、その子どもの母親の妊娠期及び小児期の社会・環境要因のデータとのリンケージを行い、母親の妊娠期の環境要因が、その子どもの顎顔面形態に影響を与えることを明らかにした。また前年度までに行なった実態調査の結果の解析および学会発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、平成23年度、27年度、および29年度に実施した甲州市中学校における不正咬合の実態調査及び質問紙調査の結果の解析、学会発表を行った。また平成23年度、27年度に実施した実態調査と、出生時や幼少時のデータとのリンケージを行なった。妊娠期から中学生まで追跡可能であったのは772人であり、これまでに施行した実態調査で得られた資料から、母親の妊娠期の喫煙習慣が、その子どもの永久歯萌出歯数の不足に影響を及ぼすことを明らかにした。永久歯の萌出歯数の不足が認められた子どもの割合は4.9%であった。全ての共変量を調整後、母親による妊娠初期の喫煙は、子どもの永久歯先天性欠如のリスクが4.37倍(Adjusted Odds Ratio:4.37 , 95%信頼区間:1.23-15.57)であった。現在この関連性に関する知見について投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、以下の手順で、さらにデータのリンケージを行い、データ解析を進める。 実態調査で得られたデータは甲州市地域保健センターに送られ、既存のデータに追加され、リンケージ・匿名化・ID化された状態で山梨大学、東京医科歯科大学へ移動され、統計学的見地から顎顔面形態に影響を与える妊娠期及び小児期の環境要因ならびに顎顔面形態と思春期の子どもの健康状態との関連性の評価を行う。さらに、同一人種であるが異なる環境に生活する思春期の日本人とモンゴル人の児童の顎顔面形態の比較検討を行うことで、社会・環境要因が顎顔面形態に与える影響を検索する。得られた結果に関しては、随時学会発表や論文執筆をすすめていく。 また、対象集団の成人期の健康状態を把握するために、追跡調査の実施準備を行う。フィールドの調整のために、山梨大学と甲州市地域保健センター、各中学校と連携しながら準備を進めていく予定である。 また、調査時間の制約等のために平成27年度に行わなかった、三次元非侵襲的撮影装置(Morpheus)を用いた、顎顔面軟組織形態の計測や保護者を対象とした詳細な質問紙調査に関しては引き続き学校や研究協力者である山梨大学の先生方と実施に向けて調整を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)3次元軟組織計測を後日希望校、希望者のみに行う予定であったが、学校等の事情によりスケジュールを組むことが困難であったため、次年度以降に行うことにしたため。また、追跡調査の準備、及び平成29年度の調査結果のリンケージを今年度に行うこととなった。 (使用計画)上記の実態調査を行う際の物品準備や調査の旅費などに使用する。
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