2017 Fiscal Year Research-status Report
スペイン語コロケーション教材開発に向けたスペイン語と英語の対照研究
Project/Area Number |
17K17698
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
蔦原 亮 九州大学, 言語文化研究院, 助教 (90792432)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | スペイン語 / 英語 / コロケーション / 教材 / 語彙的難易度 / 多義性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は分析対象である500のスペイン語頻出他動詞と主語、目的語として特に共起することの多い名詞をコーパスより抽出し、対応する英語コロケーションを模索した。これは本研究の最終目的である、スペイン語コロケーション教材を作成するためのデータである。データをもとに教材を作成しつつ、以下に挙げる二本の研究論文を執筆した。 一本目はスペイン語と英語の軽動詞に関する論文である。軽動詞とは日本語で言えばスルにあたる動詞である。日本語の軽動詞はほぼスルの一種類のみであるが、スペイン語と英語には複数の軽動詞が存在し、それぞれ固有の用法を持つ。本研究ではその対応関係を精査し、目的語のタイプ別に生じる対応関係の規則性を報告した。この研究成果は日本イスパニヤ学会で報告し同学会誌、Hispanicaに投稿した。 二本目は動詞の習得難易度の数値化に関する研究である。スペイン語と英語のコロケーションの対応関係を分析する中で、外国語の動詞の習得の難易度は、その語義数、各語義の出現頻度、ならびに学習者の母国語とのズレという三種類の要因に大きく依存するという知見が得られた。そこでコーパスを使用してこの三要素を定量的に分析し、動詞の難易度を数値化した。この手法を用いて、本研究の分析対象である500の動詞のうち、再頻出の 100 の難易度を査定した。これにより日本人学習者が特に注意を払うべき動詞が明らかとなり、また、各動詞について、特に注意深く教えるべき語義が浮き彫りとなった。この分析結果はスペイン語コロケーション教材を作成する際に極めて有用な指針ともなる。この習得難易度に関する研究は、スペイン・バレンシア大学で開催されたスペイン語教育学会 Foro de los profesores de ELE で報告し、同学会誌に論文を投稿した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度は年度の途中より九州大学に専任の助教として転出したことで研究に充てられる時間が大幅に増加し、当初の予定を上回るスピードで研究を進めることができた。 今年度、および来年度の計画も、東京外国語大学に在籍していた時の週17コマの授業を担当するという前提で作成したものであり、前倒しで進めていくことができると考えている。 今後急病、怪我などで研究が一時的に停止することがあったとしても、昨年度に前倒しをした進捗部分や予想外の増加した研究時間で埋め合わせをすることができるように思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究一年目である昨年度はデータの収集、言語学的に興味深い現象の分析を予定ていた以上のペースで進めることができた。今後は収集したデータ、および数値化した語彙的難易度を参照しながら教材を作成し、スペイン語と英語の対象研究を実施していく。直近では英語の get up, take off など、動詞と副詞からなる表現と対応するスペイン語コロケーションの対象研究を行う。
|
Causes of Carryover |
年度の途中で九州大学に専任助教として着任したことにより、研究計画を執筆した際には想定されていなかった個人研究費が生じた。この個人研究費で本来、科研費での支払いを予定していた物品や旅費を支払った結果、科研費を次年度に繰り越すこととなった。 研究の進捗が予定よりも順調であることから、繰り越した科研費を併せ、今年度は当初予定しなかった学会発表などを実施することを検討している。
|