2018 Fiscal Year Research-status Report
渓流に生息する両生類幼生の幼生期間と変態サイズにおける表現型の可塑性の意義
Project/Area Number |
17K17706
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
岩井 紀子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50630638)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 変態戦略 / 両生類 / 渓流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、渓流に生息する両生類幼生が示す表現型の可塑性が、どのような変態戦略に基づいて進化したのか理解することを大目的とし、1)渓流性幼生に見られる越冬の有無を、成長速度の減少に対する変態戦略の相違で説明すること、2)種によって異なる変態戦略を、成熟サイズに対する変態サイズの相対的重要性や、利用する水体の種類で説明すること、を目的とした研究を行っている。仮説1(渓流性幼生の越冬の有無は、成長速度の減少に対する反応の違いによる)については、越冬の有無が異なる渓流性の幼生を対象に、食物条件によって成長速度を操作する飼育実験を行う。変態サイズと幼生期間の関係を数理モデルに当てはめ、成長速度に対する反応を説明する。仮説2(種によって異なる変態戦略は、水域と陸域における成長の相対的重要性による)については、越冬の有無や利用する水体が異なる種において、変態サイズと成体サイズの関係を野外データから明らかにする。越冬の有無、および、利用する水体の特性(渓流/一時的な水体)の間でそれぞれ水域と陸域における成長の相対的重要性を比較することとしている。 本年度は、昨年度から引き続き、越冬するツチガエル、オットンガエル、越冬しないアマミハナサキガエル、カジカガエルの飼育を行い、オットンガエル、アマミハナサキガエル、カジカガエルについては飼育を終了した。成長結果と変態状況をまとめ、学会発表を行った。仮説2に関しては、年輪解析を進めており、研究計画通り進捗していると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
仮説1については、越冬するツチガエル、オットンガエル、および越冬しないアマミハナサキガエル、カジカガエルの飼育を行い、オットンガエルとアマミハナサキガエル、カジカガエルの飼育を終了した。ツチガエルは一部が変態したが、2度目の越冬に入った個体があり、引き続き飼育を行っている。ここまでの飼育結果についてまとめ、学会発表を行った。越冬の有無によって戦略が大きく異なることは見られなかったが、越冬ありの場合、変態季節を揃える可能性が示された。そのため、次年度はオットンガエルの季節別飼育実験を行う予定である。仮説2については、成体の指骨採取を追加した。アマミイシカワガエルの指骨を用いた年輪解析を進めている。アマミイシカワガエルの野外における変態サイズの変異について論文にまとめ、投稿した。研究計画通り、順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
仮説1については、引き続きツチガエルの飼育を継続する。オットンガエルについては、季節によって変態戦略が異なる可能性があることから、季節別の飼育を行う予定である。一方で、予定していたアマミイシカワガエルについては、飼育容量の限界と、卵塊の入手が困難であることから、飼育せず、オットンガエルによって代替する。仮説2については、アマミイシカワガエルの指骨解析を終了する。投稿している論文の対応を進めるとともに、成体サイズと変態サイズの関係について、仮説2の結果も踏まえて新規の論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
インキュベータを購入予定であったが、飼育機を別で使用できることになったため、購入を控えた。一方で、飼育可能個体数が増加したため、個体数を増やし、それに伴って必要となる次年度の飼育補助の雇用費に充てることとした。
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