2017 Fiscal Year Research-status Report
Creation of multi-functionalized monodomain liquid crystalline elastomers by incorporating dynamic covalent bonded cross-links
Project/Area Number |
17K17708
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
林 幹大 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70792654)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 液晶エラストマー / 結合交換型動的架橋 / 応力緩和 / 成型加工 / 熱可逆伸縮 / vitrimer |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、目的の主鎖型液晶エラストマー調製法の確立と物性評価を主に行った。dimethyl p,p’-bibenzoateと1,2,6-hexanetriol、1,5-pentandiolを溶融重縮合し、フリーOH基を含む主鎖型液晶ポリエステルを得たのち、エステル交換触媒(1,5,7-Triaza bicyclo[4.4.0]dec- 5-ene(TBU))を混合して鎖間を熱架橋した(フリーOH基とエステル結合間で架橋が起こり、その際新たにフリーOH基が生成するため、系中のフリーOH基の数は一定である)。DSC測定と広角X線散乱より、架橋後の試料も液晶性を保っており、液晶―液体相転移温度(Ti)は約109°Cに有することを確認した。力学特性評価として、熱機械測定と応力緩和測定を行った。エステル交換触媒を含む架橋試料では、高温での軟化(軟化温度は約166℃)およびほぼ100%の応力緩和が観測された。一方で、エステル交換触媒を含まない試料では、軟化や応力緩和が見られなかった。これらの比較から、エステル交換触媒含有試料の高温での軟化や応力緩和は、高温で触媒が活性化され、フリーOH基とエステル結合間で結合交換が起こるためといえる。実際に、200°Cのヒーター上に一定時間試料を置くと、徐々に軟化し、再成型が可能であった。モノドメイン化した試料に関しては、結合交換が凍結している軟化温度以下では、Ti付近(~109°C)で可逆な伸縮を示し(伸縮率約40%)、従来のLCEと同様の伸縮特性を有することが確認できた。その他、最近では、架橋度と液晶エラストマー試料の力学特性との相関についても判ってきた。 上記成果は、例えば第66回高分子学会年次大会や第65回レオロジー討論会などの国内学会、およびInternational Union of Materials Research Societies(IUMRS-ICAM) 2017などの国際学会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、 結合交換型動的共有結合架橋を組み込み、高温での良成型加工性を付与した新規主鎖型液晶エラストマーの創製を主な目的としている。課題申請時の研究計画では、平成29年度は<分子合成・架橋反応法の確立>と<物性評価・解析>としてあり、上記で示したとおり、今年度は結合交換型動的架橋液晶エラストマーの調製法の確立および物性評価まで行うことができた。また、架橋度と物性の相関など、液晶エラストマーの研究分野における興味深いテーマについても追究することができてきている。これらの理由から、現在までの進歩状況としては「おおむね順調に進展している」とする。また、学会発表は、国内学会での口頭発表が2件、国内国際学会が1件を行った。新規材料として同分野の研究者からの興味も得ることができ、本研究課題の新規性・意義を感じることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
優先事項としては、上記成果をまず論文としてまとめ、発表することである。また、課題申請時の研究計画では、平成30年度の計画として<4.物性制御への挑戦>と記載した。本分子設計での物性制御は、用いる構成モノマーや割合を調整することで行うことができると考えている。実際に、液晶ポリエステルのジオールスペーサーとして用いている1,2,6-hexanetriolと1,5-pentandiolの割合を変化させることで、液晶―液体相転移温度(Ti)が変化することがすでに確認できている。今後は、液晶エラストマーとしての力学特性について評価していく予定である。 さらに、平成29年度に研究を遂行する中で、結合交換型架橋を利用して調製する架橋材料の「特異的なゲル化機構」を解明するという研究テーマにも着手した。これまで、結合交換型架橋を伴う材料(vitrimerと総称される)の、架橋後の試料の物性評価は盛んに行われてきた。しかしながら、架橋材料が得られるまでの分岐生成・架橋進行・巨大分子化に関しては十分に知見がない。本研究課題での分子設計に用いている結合交換型架橋は、架橋生成の際、分子鎖の切断を伴う。このような特異的な架橋の進行に基づくゲル化機構はこれまで十分に解明されていないため、本研究課題執行中にこのゲル化について詳細を明らかにできれば、学術的に意義があると言える。現在は、特に、結合交換に関与する官能基(本分子設計の場合は、フリーOH基とエステル結合)の比率が、ゲル化の進行に与える影響について、主に動的光散乱測定を用いて詳細に調査している。ゲル化機構の解明を行ったのちに、架橋試料における官能基の比率と力学物性との相関について明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、ほぼ使用計画と同額を使用して研究を遂行した。差額については、16000円程度であり、ほぼ差がないといえる。差額分16000円は、平成30年度の物品費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)