2018 Fiscal Year Research-status Report
過去の地震活動に基づく複合型短中期地震予測モデルの開発
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17K17722
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
野村 俊一 統計数理研究所, モデリング研究系, 助教 (70719640)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 活断層地震予測 / 再来間隔の変動係数 / ガウス過程 / ベイズ推定 / プレート間滑り分布 / 非定常更新過程 / 東北地方太平洋沖地震 / 前震識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
大規模地震の予測精度向上に向けて前年度に続き3つの課題に取り組み,それぞれ次の成果を挙げた. (1)活断層地震の再来間隔における変動係数の空間分布推定:活断層で繰り返される地震の将来予測において大きな不確定性をもつ再来間隔の変動係数の推定精度を向上させるため,変動係数に2次元ガウス過程で表現される空間的相関および各断層周辺の活断層密集度による影響を取り入れた階層ベイズモデルを開発した.提案モデルを地震本部の公開している主要内陸活断層カタログへと適用した.また,過去の活動時期が不確定性をもつ活断層における変動係数の推定について,ベイズモデルに基づく推定手法と通常の最尤法に基づく推定手法の推定精度を数値実験により比較検証し,活動時期に不確定性がある下では変動係数の最尤推定量は大きなバイアスをもち,ベイズ事後分布に基づく推定が適切であることを示した. (2)小繰り返し地震活動に基づく東北地方太平洋沖地震以後のプレート間滑りの逆推定:2011年東北地方太平洋沖地震以降の東日本太平洋プレート境界における繰り返し地震カタログに基づいて,プレート間準静的滑り速度の時空間変動の逆推定を行った.過去の研究業績にて提案した非定常更新過程モデルを適用し,節点配置をアダプティブに調整したスプライン関数を用いて2011年東北地方太平洋沖地震後の急激な滑り速度変化を表現した. (3)前震現象を識別する新たな点過程モデルの開発:余震予測において最も成功しているマーク付き点過程モデルであるETAS(Epidemic Type Aftershock Sequence)モデルについて,本震に先立って発生する前震活動を前もって識別して本震発生を予測するための新たな点過程モデルへの拡張を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績に掲げた3つの研究課題について,それぞれ順調に進展しており,次の最終年度に向けて学会および論文誌における成果発表を行っていく.
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Strategy for Future Research Activity |
大規模地震予測の実現に向けて,研究実績に掲げた3つの課題について次のように取り組みを進めていく. (1)活断層地震の再来間隔の空間モデルに基づく将来予測性能の向上:今年度に開発した活断層地震の再来間隔の変動係数の空間分布を推定する階層ベイズモデルについて,周辺活断層のどのような情報を取り入れれば推定精度が上がるかを吟味し,最終的な活断層地震の予測モデルを決定する.決定した予測モデルに基づいて,国内の主要内陸活断層における新たな将来地震確率の予測を与える. (2)2011年東北地方太平洋沖地震の前後におけるプレート間滑りの特徴比較:今年度は2011年東北地方太平洋沖地震以降の繰り返し地震に限定して解析を行ったのに対し,新たに提供を受けた2011年以前からの通し期間における繰り返し地震カタログの解析を行い,2011年東北地方太平洋沖地震の前後で東日本におけるプレート間の準静的滑りがどのように変化しているかを議論する. (3)前震現象を識別する新たな点過程モデルの理論的および実証的検証:今年度に開発した前震識別モデルについて,統計的推論の漸近的性質を理論的に明らかにするとともに,CSEP-Japan(日本における地震活動に基づく地震発生予測検証実験)に用いられる過去の期間のデータに提案モデルを適用して,その予測性能の検証を行う.十分な予測性能が見込める場合には,CSEP-Japanへ実装したモデルを提出し,他のモデルとの予測性能比較を目指す.
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Causes of Carryover |
今年度予定しているAOGS 2019および論文の掲載料を確保するために,物品費を抑え次年度使用額の確保を行った.
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Research Products
(16 results)