2017 Fiscal Year Research-status Report
祖父母の育児参加による幼児のパーソナリティ発達及び親子のQOLへの影響―日中比較
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17K17723
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
孫 怡 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (10794688)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日中比較 / 祖父母育児 / 親子かかわり |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度、本研究を発足してから、日本と中国両国において、それぞれの社会文化環境の下で、祖父母の育児参加実態およびそれによる親子の心身健康への影響について、量的研究(質問紙調査)と質的研究(インタビュー調査と家庭観察)を同時に遂行した。日本ではベネッセ次世代育成研究所および京都保育福祉専門学校と連携し、関東と関西において質問紙調査(320部)、インタビュー調査(10組)のデータを収集した。中国では、復旦大学および上海の婦幼保健所と連携し、中国上海市で質問紙調査(350部)、インタビュー調査(10組)、家庭観察(7組)を実施した。 それらのデータはいままで得られた祖父母研究の関連結果と合わせて整理・分析し、国内・国際学会で発表した。国内では、日本発達心理学会29回大会でシンポジウム発表、日本子ども学会第14回学術集会でポスター発表を行った。国外では、15th European Congress of PsychologyとAsian Association of Social Psychologyの2017大会でそれぞれポスター発表とシンポジウム発表を行った。研究成果の論文化も進んでおり、Asian Social ScienceやJournal of Reproductive and Infant Psychologyなどの学会誌へ投稿した。2017年度は、祖父母研究と関連する発表は計:論文1本、学会発表6件でした。また、一部の研究結果は2018年8月アメリカで開催される American Psychological Association(APA) Conventionに採択され、シンポジウム発表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は1歳児を持つ母親を対象に、3年間の日中比較縦断調査を実施する予定である。2017年度は予定通りに日本と中国両国で、それぞれ1時点目の調査を実施した。本研究は大規模の日中比較縦断調査であるため、共同研究者との連携が必要となり、5月は慶應義塾大学の研究員姜娜氏、立命館大学の博士課程大学院生汪為氏および中国復旦大学の童連博士等日中幼児研究の専門家と共同研究チームを形成した。6-7月は、文献整理、環境整頓、研究実施の手順などを固めた。8月は日本で、調査協力先への依頼、募集チラシの作成を行った。9月は回答者の負担を軽減するため、survey monkeyというオンラインアンケートツールを利用し、「祖父母育児調査」用の日本語アンケート回答サイトを開発した。10月から京都保育福祉専門学校と連携し、京都にある2か所の保育園に調査協力者の募集を始めた。各保育園に在籍している1歳児が少なく、関西地域だけでのデータ収集は目標サンプル数に達成できなかったため、募集範囲を関東首都圏に拡張した。ベネッセ次世代育成研究所の協力を得て、11月にかけてアンケート調査のデータを約320部取得した。その中、10人にインタビュー調査も実施した。12月からは中国の復旦大学および上海の婦幼保健所と連携が取れ、婦幼保健所で調査協力者の募集を始めた。1月には、日本語のWebアンケートと同じ、中国語のWebアンケートを作成したが、survey monkeyが中国現地でうまく実行できず、2月にあらためて中国の業者に依頼し、本研究専用の中国語Webアンケート回答サイトを開発した。3月から順調に稼働し、4月までアンケート回答350部を回収した。インタビュー調査(10組)、家庭観察(7組)も実施した。本研究の遂行にあたって、当初予期していないことが起こったが、困難を克服しつつ、おおむね計画通りに順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の前半は、1年目に収集してきたデータの解析、研究成果の発表、および協力者へのフィードバックを遂行していく予定である。分析にあたって、両国とも量的データと質的データがあり、作業量が大きいため、共同研究者と分担して分析を進めていく方針である。親子のかかわりに関する行動観察は2名以上の研究者が同時に評価する必要があり、一緒にコーディングして分析を行う予定である。その後、研究チーム全員でデータ全体を統合して、研究成果をまとめ、学会発表と論文化を計画している。 一方、研究成果の社会還元も含め、1年目の研究結果を調査協力者たちに報告することや、社会全体に発信することを予定しており、そのため本研究用のHPを作成する計画である。また、今後の追跡調査を順調に展開するため、1年目に協力してくれた回答者向けの不定期的なonline育児交流活動なども開く予定である。 次年度の後半は、1年目と同様に、日本と中国でそれぞれ質問紙調査とインタビュー調査、家庭観察の2回目の追跡調査を実施する予定である。質問紙調査は、1年目の調査協力者と連絡を取り、2回目のWebアンケートのリンクを送信し、回答していただく形式で実施する。インタビュー調査と家庭観察は、日本と中国それぞれ現地で行う。 また、現在使用している行動観察の研究手法に加え、母子相互作用の場面において、NIRS脳計測や心拍など生理指標も取りこんで、より客観的に親子の反応を測る計画を立てている。
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Causes of Carryover |
今年度に購入する予定の統計解析ソフトウェア(SPSS,AMOS)とパソコンを大学から借りることができたため、費用が節約できた。その分は、次年度に共同研究者の海外出張と学会発表の旅費に回す予定である。 翌年度分として請求した助成金は、主に計画した質問紙調査とインタビュー調査の実施にあたって、生じるWebアンケート作成費・管理費、調査実施の旅費、協力者への謝礼に使用する予定である。また、質的調査には、インタビューの他、家庭における行動観察も加える予定であり、謝礼の費用が増加する見込みである。その分は、当初計画したデータ入力費などを節約して補充する予定である。
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