2018 Fiscal Year Research-status Report
祖父母の育児参加による幼児のパーソナリティ発達及び親子のQOLへの影響―日中比較
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17K17723
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
孫 怡 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (10794688)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 祖父母育児 / 母親QOL / 幼児QOL / 縦断研究 / パーソナリテイ / 養育環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は本研究の2年目に入り、1年目のデータを整理・分析し、得られた結果を学会で積極的に発信しつつ、論文にもまとめている。また、2年目追跡調査の準備および実施を進めている。 1年目の調査結果によって、日本では祖父母同居の割合が5%未満で、日常的接触頻度も少ないため、全体平均から祖父母による孫のパーソナリテイへの直接的な影響は少ないと推測され、大規模な量的調査より典型的な対象者に絞った質的調査がより効果的でふさわしいと判断され、2年目は祖父母の育児支援とかかわりが多い家庭(10組)を対象にインタビュー調査のみを実施した。縦断的事例研究を通じて、日本の祖父母育児参加の実態と親子への影響の経年変化を検討することにした。 中国では、1年目の質問紙調査の結果から、約6割の家庭で祖父母が共同育児しており、母親のQOLと子どものパーソナリテイに影響を及ぼしていることが分かった。2年目は1年目の質問紙調査協力者(522人)に連絡を取り、同意を得たうえで2年目の調査依頼を送り、現在回収中である。その中、一部の協力者は2回目のインタビュー調査と行動観察も依頼し、現時点でインタビュー調査(9人)と家庭観察(8組)を実施した。 以上の調査結果は、国内(発達心理学会30回大会、パーソナリテイ心理学会第27回大会、子ども学会第15回学術集会)および国際(American Psychological Association、APA)学会で発表した。APAでのシンポジウムはContinuing Education Programにも指定された。研究成果の論文化も進んでおり、Journal of Reproductive and Infant Psychologyに掲載された。育児中の親のQOLに関する著書も発行された。2018年度は、本研究と関連する発表は計:論文1本、著書1本、学会発表11件であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3年間にわたる日中比較縦断研究であり、2018年度は1年目で収集してきた日中データを分析し、一部の研究結果を学会および学会誌で発信しつつ、2年目の追跡調査を進めている。下記が現在まで具体的な進捗である。 18年3-6月:上海のある婦幼保健所の協力を得て、1歳児を持つ親を対象にWeb調査を依頼し、6月末まで計522部の回答を回収した。その中、一部の協力者を対象にインタビュー調査(10組)及び家庭観察(7組)を実施した。7月:得られた行動観察データを分析し、協力者の希望に応じてフィードバックを送信した。8月:質問紙データの入力・整理、データ分析を行って、結果の一部をアメリカのAPA学会で発表した。9-10月:日中のデータを整理・分析し、日本パーソナリテイ心理学会および子ども学会で発表した。11月:ベネッセ次世代研究所が行った大規模縦断質問紙調査「妊娠・出産・子育て基本調査」のデータアクセス権を取得し、祖父母の育児参加に関連する情報を抽出して再分析した。その結果は、本研究1年目の質問紙調査の結果と一致し、日本では祖父母と共同育児する家庭の割合がかなり少ないことが検証され、日本では2年目以降の追跡調査はインタビューのみにした。12月: 日本での2回目インタビュー調査の資料準備、協力者の募集を行った。1月:日本でインタビュー調査(10組)を実施した。3月:2回目インタビュー調査のデータ入力・整理・分析を行った。4月:中国での2回目の大規模質問紙調査を準備しつつ、1回目の協力者と連絡を取り、2回目の追跡調査を依頼した。現在回収中である。その中、一部の協力者に質的調査も依頼し、現時点でインタビュー調査(9組)と家庭観察(8組)を実施した。本研究の遂行にあたって、1年目の調査結果によって、2年目の実施計画を修正した点はあるが、おおむね計画通りに順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これからは、2回目の調査が全部終了後に、質的データと量的データを整理・解析し、協力者の希望に応じて適切なフィードバックを送る予定である。分析にあたって、両国とも量的データと質的データがあり、作業量が大きいため、共同研究者と分担して分析を進めていく方針である。1回目と2回目のデータ分析結果をまとめて、研究成果を国内・国際学会で積極的に発信することおよび、論文化して学会誌(e.g., 日本発達心理学、中国幼児教育研究、Journal of Family Psychologyなど )に投稿することを計画している。また、研究成果の社会還元も含め、調査結果を調査協力者および関連協力機構に報告する。 次年度の後半は、2回目調査と同様に、日本ではインタビュー調査、中国では質問紙調査とインタビュー調査、家庭観察の3回目の追跡調査を実施する予定である。質問紙調査は、2年目の調査協力者と連絡を取り、3回目のWebアンケートのリンクを送信し、回答していただく形式で実施する。インタビュー調査と家庭観察は、日本と中国それぞれ現地で行う。 また、家庭観察の中に、親子のかかわり指標(Interaction Rating Scale, IRS)を用いて、親子のかかわり質を評定する。評定結果によって、親子のかかわり質があまりよろしくない家庭を対象に、協力者の同意を得られたうえで、希望に応じて支援的介入を提供する。最後に、介入前後の親子かかわりと子どもの発達状況、親子のQOLを比較することによって、今後の臨床的支援に有力な実践的根拠を提供すると考えられている。
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Causes of Carryover |
中国での調査時期が5月連休前後であったため、航空券が高騰し、旅費が計画より少し高かった。
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[Journal Article] Quality of life in Japanese couples during the transition to first-time parenthood2018
Author(s)
Sun, Y., Yoshitake, N., Sugawara, M., Matsumoto, S., Sakai, A., Takaoka, J., Goto, N.
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Journal Title
Journal of Reproductive and Infant Psychology
Volume: 27
Pages: 1-15
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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