2019 Fiscal Year Research-status Report
祖父母の育児参加による幼児のパーソナリティ発達及び親子のQOLへの影響―日中比較
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17K17723
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
孫 怡 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (10794688)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 祖父母 / 親子かかわり / 養育環境 / QOL / 幼児発達 / 縦断調査 / 日中比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の3年目では、1年目と2年目のデータを整理・分析しつつ、得られた結果を国内・国際学会で積極的に発表を行った。計国内学会発表4件、国際学会発表2件、一般研究報告4件であった。それらの研究成果を日本と中国の協力者および世界中の幼児養育者に伝わるように、日本語、中国語、英語で発表された。 また、今年度は中国における追跡調査の2回目と日本における3回目の調査を実施した。中国では、5月に以前本調査に参加した9家庭を訪問し、親子及び祖父母を対象に2回目の行動観察とインタビュー調査を行った。日常生活の中における養育者と子どもとのかかわり方や、祖父母と母親の養育行動・育児方針の相違点などが見られた。6月中に、行動観察で得られた知見と助言をまとめて協力者に報告書を送った。12月から、2-3歳児の母親を対象に、祖父母の育児参加状況や母親の養育態度、生活満足度(QOL)および子どもの社会適応などについて大規模の質問紙調査を開始した。現在460名の回答が得られているが、まだデータを集め続けている。本調査では、専用のWeb回答サイトを開発し、回答者が回答直後に自分の結果(公開可能な部分のみ)と関連の助言をみられるように設計されている。それによって、協力者の参加意欲を高めただけでなく、本研究で得られた知見と有益な関連情報を積極的に参加者に還元し、子育て世代への育児支援につながっていくと考えられる。一方、2020年1月から日本において以前の調査に参加した協力者(3歳児を持つ母親10人)を対象に、この1年間における祖父母の育児支援状況の変化および親子の心身健康について、3回目のインタビュー調査を開始した。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて中断された。実態が収束されたら再開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年5月に中国現地で、以前本研究に参加された9家庭を訪問し、祖父母・母親・子どもを対象に、行動観察とインタビュー調査を行った。ビデオカメラで撮影された遊び場面と食事場面における養育者と子どもの行動特徴について、かかわり指標(Interaction Rating Scale)に基づいて、二人以上の共同研究者と一緒に行動分析を行った。6月中に、行動観察で得られた知見と助言をまとめて協力者に報告書を送った。7-8月に、録音されたインタビュー内容を整理・分析し、9月に一部の分析結果を国際学会で発表した。10月に、中国側の研究協力機関(上海にある婦幼保健医院)と連絡を取り、健診に来られる2-3歳児の母親を対象に、質問紙調査の実施を依頼した。育児中の母親の負担を軽減するため、携帯やパソコンなど電子機器上で便利に回答できるように、11月にWeb開発の専門業者に依頼し、本研究専用のWebサイトを開発された。協力者がアンケートを回答後、個人が直ちに回答結果(公開可能な部分のみ)とそれに応じた助言が見られるように設計されている。12月からは、Web質問紙調査を実施し始めたが、12月末から中国における新型コロナウイル感染拡大の影響を受け、当医院も一時的に閉鎖になったため、調査が中断された。2020年3月からwebで質問紙調査を徐々に再開し、5月末時点では460名の回答を得られた。一方、日本では、2020年1月に以前本研究のインタビュー調査に参加された協力者(祖父母の育児支援を受けている母親10人)と連絡を取り、3年目のインタビュー調査を実施する予定であった。しかし、1月末から、日本でも新型コロナウイルスの感染が拡大し、感染予防のため、予定した対面調査を中断した。現時点で、1人のみに調査を実施したが、他の9人からも調査協力への同意を得られているため、実態が収束されたら再開する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は縦断調査の3回目(一部は2回目)を実施したが、中国と日本および世界各国における新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、一部の調査は途中で中断された。そのため、本研究の実施期間を1年間延長し、調査方法を見直しする必要がある。日本では、インタビュー調査の3回目にあたって、1人のみ実施済で、まだ9人が残っている状況である。日本における新型コロナウイルスの感染状況に見合わせて、実態が落ち着いてから実施する予定である。万が一、対面調査が難しい場合、電話でインタビューを行う対策を取る予定である。 中国では、一旦中断されたWeb質問紙調査が3月から徐々に回復し、現在続けて進行中である。目標サンプル数(全部で500人以上、その中に縦断データ200人以上)を達成するため、2020年6月末までに延長することにした。特に、以前の参加者に今年も協力してもらうため、研究協力機関(婦幼保健医院)の医者と保健師に依頼し、健診に来られない母親に電話で連絡し、同意を得られたうえで、携帯SMSやSNSアプリなど通信ツールを通じてWeb調査のURLを協力者に送り、本研究の専用Webサイト上でアンケートを回答するように進めていく予定である。また、今年に中国現地で実施する予定の行動観察とインタビュー調査の3回目は、中国と日本のコロナウイルス感染状況を見合わせて、延期する可能性も考えられる。万が一、中国への渡航が難しい場合、中国現地の共同研究者(上海復旦大学の童連准教授、上海師範大学の李燕教授)に、行動観察およびインタビュー調査を依頼する対策も検討している。データ収集が終わったら、集中的にデータ分析と論文化に取り込む予定である。
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Causes of Carryover |
中国と日本における新型コロナウイルスの感染が拡大している影響を受けて、2019年12月末から2020年3月にかけて中国と日本で実施する予定の質問紙調査とインタビュー調査がやむ終えず中止となりました。計画通りのサンプル数を集めるため、調査期間を延ばす必要があります。調査実施期間の延長により、インタビュー調査のテープ起こし作業や質問紙調査データの分析期間、結果まとめなども計画より延長になる見込みです。また、調査実施が2020年度に延長することにより、質問紙調査協力者への謝礼やWebアンケート調査用のサーバー利用費、中国と日本で行うインタビュー調査および行動観察に伴う海外渡航費用と調査補助者の人件費などが発生する予定です。
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