2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K17730
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
鎌原 勇太 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 講師 (70710268)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 環境 / 戦争 / 因果効果 / 森林破壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間の活動が環境に与える影響は、重大な研究テーマの一つである。しかし、これまでは経済活動が環境に与える影響については社会的・研究上の関心を集めつつも、戦争が環境に及ぼす影響についてはあまり多くはなかった。本研究課題は、その陥穽を埋めようとするものである。 そこで、今年度の研究課題は、当初の予定どおり、(1)本研究課題に関する研究動向の把握と、(2)衛星画像データおよびGIS(地理情報システム)を活用し、森林面積等データベースの構築を行うことであった。まず、(1)に関して、今年度は主に森林破壊の原因に関する自然科学分野の研究動向を追った。その結果、社会科学的・政治学的変数、または森林破壊の原因として国家間戦争や内戦を扱った研究は多くないことや、各研究のリサーチ・デザインが大きく異なることから統一的見解が得られていない状況であることが明らかとなり、本研究がインパクトを残す余地が大いにあることがわかった。次に、(2)に関して、各種既存指標を統合したデータベースを構築するとともに、アフリカから3カ国(コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、アンゴラ)、南米から2カ国(コロンビア、ベネズエラ)、アジアから1カ国(カンボジア)の計6カ国に関して、Landsatからの衛星画像データの収集と森林破壊の程度の測定に着手した。なお、森林破壊の程度は、通常植生を測定するのに用いられ、既存研究でも広く利用されているNormalized Difference Vegetation Indexを採用している。データベースの構築については、引き続き進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由は2点ある。(1)すでに他の研究者や組織によって公開されている既存のデータベースのクリーニングや統合に予想以上に時間がかかったことが挙げられる。(2)本研究の中心課題の一つである、森林等データベースの構築において、重要となる単位が各国を一定の大きさで区切った「グリッド」という単位である。しかし、既存指標の一部ではこのグリッドの大きさが分析に適さないほど大きいため、より詳細な分析を行うための小さなグリッドでコーディングする必要が生じた。そこで、申請時の「研究の遅れ等への対応」に記載したとおり、分析対象国を6カ国に絞るという選定作業に多くの時間を要したことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
国家レベルに関しては、隣国との相互作用を考慮に入れる空間統計学的手法を用いた単著研究と、戦争が森林破壊に及ぼす影響を国家レベルで考察した共同研究に着手しており、国際学会への発表と国際ジャーナルへの投稿を今後行う予定である。また、国内レベルに関しては、上述のとおり絞った6カ国を中心にデータ整備を速やかに進め、紛争が環境に与える影響に関して分析を行う予定である。また、先述のとおり、既存のデータベースのグリッドの大きさが、分析単位としては過大に大きいことから、本研究は上記6カ国を中心に新たなデータベースとして公開する見込みである。
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Causes of Carryover |
RA用に当初購入を予定していたコンピュータを安価なものにしたことと、先行研究の多くが書籍ではなく論文であったことからその購入額が安価で済んだことが原因である。 翌年度も引き続き、データベース構築のためのRA雇用を要することから、人件費を中心に使用する計画である。
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