2017 Fiscal Year Research-status Report
単一MEMSセンサによる視感・触感・温冷感を含む質感のアクティブ計測
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17K17737
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
寒川 雅之 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70403128)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 触覚センサ / 質感 / MEMS / 感性評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は工業製品等に付加価値を与えるための触り心地や見た目といった感性的な質感を、MEMS複合センサをアクティブに対象物に近接・接触させることで、定量的な評価を可能とすることを目的としており、それに向けて、平成29年度は(1)接触検知部の設計最適化、(2)人間の観察・触察行動に基づいたアクティブ計測手法の開発、(3)人間の感性評価とセンサ出力の相関性分析の3項目について研究を実施した。 (1)では、センサの接触検知部について、新たな材料を検討し、従来よりも耐水性の高い材料を用いることで、表面が濡れている場合でも質感計測を可能とした。また、センサの感度は接触部の形状に大きく依存することを有限要素解析や実験により確認し、対象物の種類により最適な形状が存在することを示した。 (2)では、公募した被験者による実験を行い、物体を見て触る時の動作をビデオカメラで撮影するとともに、腕の動きを加速度センサ・角速度センサで、接触時の荷重をフォースプレートで計測した。また、センサの計測データから硬さや摩擦係数に関する特性を得て、それに応じて動作を制御するためのシステムを構築した。 (3)では、様々な物体を触った時の硬軟、厚薄、冷温などの感性的な質感について、公募した被験者によりSD法アンケート評価を実施し、質感についての印象を数値化した。また、市販の計測装置により、評価対象物体表面の摩擦係数や表面粗さ等の物理的特性を計測した。今後、これらのデータと複合センサの出力の相関性を分析し、質感評価の指標として有用なことを示していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施項目(1)については、材料メーカの協力を得ることができたこともあり、従来よりも耐環境性に優れた材料や、人間の皮膚のように硬度の異なる多層構造をセンサの接触検知部に用いることを可能とし、計画以上の進展が見られた。しかし、計画にあった接触時の人間の指先表面の観察と、それに基づいた表面形状の設計については実施が不十分であり、平成30年度に追加の実験と検討が必要である。 実施項目(2)については、新潟大学の倫理審査委員会の承認を得て、被験者を公募し、触察・観察動作のデータを得ることができた。また、「若手研究(B)における独立基盤形成支援」により新規に導入した装置により、指先で触れた時のより詳細な荷重変化を計測できたため、当初予定よりも進展が見られたと考える。ただし、被験者の数が現状では少なく、データの再現性に課題があり、平成30年度も引き続き実験を進めていく。 実施項目(3)については、(2)と同様、計画通り被験者による感性評価を行うことができ、また、対象物の物理的特性の計測も進めることができた。しかし、(2)と同様、データの再現性のためにはさらに多くの被験者が必要であり、平成30年度も引き続き追加で実験を進める。 以上のように、当初計画以上に進展した部分と、進展が遅れている部分があり、総合しておおむね順調に進展しているという評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究において人間の触察・観察動作のデータが得られたので、それらの分析を進め、その結果に基づいて、構築した複合MEMSセンサを用いた質感計測システムの動作制御手法の開発を行う。また、得られた質感の感性評価の結果及び質感に関連する摩擦係数や表面粗さ等の物理的特性と、複合MEMSセンサの出力特性との相関性を多変量解析法等の手法を用いて分析し、本手法の質感評価法としての有用性を示す。 なお、平成29年度の研究計画において、遅れやデータの不足が見られる分については、平成30年度前半において追加で研究を進める。
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Causes of Carryover |
3月分の旅費、学会参加費、および物品費のうち、会計手続きの都合上、次年度4月に支払分が134,553円生じたため。また、「若手研究(B)における独立基盤形成支援」による追加配分のうち、96,000円分は、より詳細な触察・観察時の生体情報データ計測の必要性が生じたため、新たな計測装置の購入に充てる予定であり、次年度に使用する。
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Research Products
(19 results)