2018 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the role of phosphorylated neuronal growth-associated protein-43 kDa (GAP-43) in progression of glioblastoma
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17K17739
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
岡田 正康 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (00626492)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Glioblastoma / 膠芽腫 / phosphorylation / GAP-43 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度に膠芽腫手術標本からGAP-43のリン酸化配列をリン酸化プロテオーム解析で数カ所同定することに成功し,リン酸化を検出する抗体を作製した。脳腫瘍において確認できたGAP-43のリン酸化部位は,もともとげっ歯類における正常神経細胞の成長や再生に関わる因子として研究を重ね,平成30年度に論文公表できた(Kawasaki A*, Okada M*, Tamada A*, et.al.(*:These three authors contributed equally) iSCIENCE 4, 190-203, 2018)。平成30年度はGAP-43 T172リン酸化検出抗体(pT172)を用いた組織染色,ウエスタンブロティング等の生化学実験,さらに培養細胞実験を進めた。 (1)悪性Gradeが異なる神経膠腫に対する組織染色を行い,発現頻度や部位を検討した。(2)患者由来膠芽腫細胞を用いた培養実験でGAP-43の発現とある条件下でのリン酸化発現を確認した。(3)さらにその細胞をヌードマウスの脳へ移植するXenograftmodelの確立し,評価を開始した。さらに(4)GAP-43発現腫瘍細胞へのcrispr cas 9 systemによるGAP-43のリン酸化不活化型ノックイン細胞作製に着手した。 平成30年度の研究の結果,Gradeの低い腫瘍細胞では正常神経にGAP-43のリン酸化発現を組織学的に確認できるも,腫瘍細胞での発現は少ないことが判明し,当初の予定通り,最も悪性度の高い膠芽腫に集中して検討を繰り返している。 こうして神経の再生や発生段階で神経軸索が伸長する際にリン酸化頻度が高いタンパク質として我々が見出したGAP-43の新規リン酸化部位のリン酸化に着目し,そのGAP-43のリン酸化と膠芽腫細胞の細胞突起構造形成や治療抵抗性との関連についてさらに明らかにしてゆきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究中に質量分析で膠芽腫手術標本からGAP-43のリン酸化配列を同定したが,この腫瘍におけるGAP-43のリン酸化が,げっ歯類の正常神経細胞における成長や再生時に発現上昇することを,2018年度に論文公表できた(iSCIENCE 2018)。以下に研究進歩状況として研究概要の(1)(2)(3)(4)の詳細を述べる。 (1)神経膠腫患者のうちGrade Ⅰを2名,Ⅱを3名,Ⅲを9名,Ⅳ(膠芽腫)を19名解析した。病理組織の免染により腫瘍細胞でGAP-43 T172のリン酸化(pT172)発現が確認できた組織はⅣ(膠芽腫)であった。GAP-43自体の発現は,正常脳の神経細胞で確認できるが,腫瘍形成による神経細胞の消失は神経細胞のGAP-43自体を消失させる。そのためGAP-43自体の染色により腫瘍境界は明確になる。一方悪性度の高い膠芽腫は,腫瘍細胞でGAP-43自体とpT172発現の発現が高まる。Necrosisや微小血管増生の強い組織の周辺でその傾向が顕著になった。 (2)患者由来脳腫瘍から細胞培養により細胞株の樹立化に成功している。GAP-43自体の発現は通常の継代した細胞から容易に確認可能であったが,GAP-43 T172のリン酸化に限ると、どのGAP-43陽性腫瘍細胞でも安定して発現を確認できる条件は見いだせていない。過酸化水素水投与によってpT172が発現する細胞株が存在するため,生育条件を今後検討する。 (3)BALBc nu/nuマウスの脳に患者由来膠芽腫細胞を移植し腫瘍形成に成功した。 (4)共同研究者と現在crispr cas 9 systemによるGAP-43 T172をトレオニンからアラニンへのノックインするために配列等を確認している。現在GAP-43 T172Aノックイン腫瘍細胞に用いる腫瘍細胞を選定中である。
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Strategy for Future Research Activity |
膠芽腫におけるGAP-43のリン酸化発現について,ヒト脳腫瘍臨床サンプルを用いた解析は進んでいる。一方,今後の治療実験とリン酸化の意義を明確にするための腫瘍細胞を用いた培養実験の確立が次年度の課題である。患者由来脳腫瘍細胞にGAP-43自体の発現は確認できており,培養系でのリン酸化の確認が十分できていない。先行実験で正常神経細胞におけるGAP-43のリン酸化はJNKと論文報告した。膠芽腫の病理組織上はJNKとGAP-43 T172のリン酸化発現部位は同じ部位と確認できている。Dishのコーティング剤や培養液を変化させるなど検討中である。一方,nude mouseの脳へ腫瘍細胞移植は順調に実験モデルが確立できたため,in vivoでのGAP-43のリン酸化とそのキナーゼを確認中である。そうした知見を積み重ね腫瘍培養の最適条件を見出したいと考えている。 Natureで膠芽腫の治療抵抗性の原因と指摘されたGAP-43について,神経の再生や発生段階で神経軸索が伸長する際にリン酸化頻度が高いタンパク質として我々が見出したGAP-43の新規リン酸化部位のリン酸化に着目することで,膠芽腫細胞の細胞突起構造形成や治療抵抗性との関連について実験な確認を急いでいる。こうしてタンパク質のリン酸化の制御による新規治療方法の確立を目指したい。
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Causes of Carryover |
前年度に購入を予定していた抗体が、納入期が間に合わないため、次年度に納入された時点で支払う予定である。
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