2017 Fiscal Year Research-status Report
A new early life stress model targeted to the lateral habenula: The mechanism of pshychiatric disorder evoked by experience
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17K17747
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中村 友也 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (70733343)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 外側手綱核 / 神経可塑性 / 母子分離ストレス / 神経活動性 / 抑制性神経細胞 / 不安様行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
外側手綱核(LHb)は(基底核,視床下部からの入力を受け)、ドパミン性神経核やセロトニン性神経核に抑制性の出力を送るため、情動や認知、睡眠に関わり、個体に及ぼすストレスによって活動が増えることが知られている。我々は、幼少期マウスのLHbに含まれるParvalbumin(PV)陽性細胞(抑制性の神経細胞)が少なく、ストレス刺激に対し神経活動性が高いということを見出した。一般的に、幼少期の可塑的な神経回路では、PV陽性細胞の活動が少ないため、強い興奮性の活動が生じる。しかし、幼少期のストレスが生涯に渡って、個体の情動や行動に影響を及ぼすことは検証されておらず、その神経回路メカニズムは明らかでない。本研究は幼少期のストレスがLHbの可塑性に働きかけて改変し、情動行動が変化する神経回路メカニズムを明らかにする。P10-20(Postnatal)の幼少マウスを、母親から毎日3時間分離(Repeated Maternal Separation: RMS)し、ストレスを与えた。RMS群の行動を評価するために、様々な行動試験を行っているが、その中でも明暗選択箱テストで,RMS群は明箱での滞在時間が減少し(p < 0.05)、不安様行動が亢進していた。RMS群では成長後(P60)、Control群と比較してPV陽性細胞が有意に減少し(p < 0.01)、LHbのストレスに対する神経細胞活動性が有意に増加(p < 0.01)していた。このようなストレス反応性の変化はLHbに場所特異的で,他の部位;海馬歯状回と扁桃体では見られなかった。これらの結果から、幼少期ストレスは部位特異的にLHbの構造や機能変化させていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幼少期ストレスと成長後の精神疾患の関係性について、RMSを用いた多くの研究が発表されている。従来、視床下部において副腎皮質刺激ホルモンの影響が大きいP1-9にRMSを行うことが主であったが、成長後のうつや不安様行動の発現には副腎皮質刺激ホルモンの影響が乏しいP10以降のRMSが必要だったので、その他の要因が重要と考えられる。平成29年度に行う研究の目的は、LHbの神経細胞活動性が高いP10-20にRMSを行う新規幼少期ストレスモデルを確立し、LHbの神経回路改変を調査することであった。上記のとおり、それは達成されており、さらに平成30年に予定していた行動実験を前倒して行った。不安様行動を測定するために明暗箱試験とオープンフィールド試験を、認知機能を測定するために新規物体探査を、うつ様行動を確認するために強制水泳試験を行った。明暗箱試験において不安様行動の発現を確認した。他の行動実験を済ませて、現在は解析を行っている。平成29年度実施しなかった実験として、カルシウムイメージングを用いたLHbの神経活動性の調査、LHbの臨界期を検討するためP10-20以外のRMSがある。前者は、日本では機器購入が難しく、実行できていない。後者は例数 n = 4で、現在は実験を実施し、例数を増やしている。以上のことより、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
① 本研究では、幼少期の経験に依存してLHbのPV陽性抑制性神経細胞に改変が起きることが示された。パルブアルブミン陽性細胞のLHbにおける機能を詳しく調べるために、GABA合成酵素種を調査したが、GAD67は発現していなかった。もう一つのGABA合成酵素であるGAD65の発現を検討する。 ② 回路の改変に与り、ストレスに反応して活動が亢進するZIF268/EGR1陽性神経細胞の役割を検討する為に、LHbの下流の神経核に逆行性トレーサーを注入し、回路の構造を調べる。 ③ 回路の改変に対応した行動解析を拡げて行い、RMS群による成体のうつ様症状、認知機能障害を検討する。 ④ 臨界期は、他の時期よりも外界から影響を受けやすい限られた時期と定義される。情動に関する臨界期の研究は、正常な脳の発達を促す生後環境を考える上で重要であるが、未だ報告はない。幼少期の経験に依存した回路の構造・機能と行動の検討に基づいて、我々はLHbの神経活動性が高まる時期にストレスを与えた結果、成長後の神経回路が変化することを見出した。RMSが限られた時期のみにLHbに対して影響を与えるのか調査するため、LHbの神経活動性が低い時期に、RMSを行う。
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Research Products
(1 results)