2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K17748
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岩本 学 富山大学, 経済学部, 准教授 (70552511)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 扶養 / 外国判決 / 執行決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究表題に掲げた「簡易化」の部分に着目した執行決定の導入可能性について仲裁法との比較検討を行いつつ,昨年度からの継続として実質扶養法の調査とその中での本研究に不可欠な制度の抽出,を中心とした研究活動を行った。これらについては以下の通り,一定数の論文と報告に結実した。 論文等の成果としては,執行決定に関連して,「確定した執行決定のある仲裁判断と民事執行法35条1項の「裁判以外の債務名義」」(ジュリスト1519号)及び「仲裁判断に対する執行決定手続の現状と展望」(国際商事法務47巻1号)を,比較実質扶養法の検討に問題となったイスラム法の適用につき序論的に考察した「イスラム金融業における準拠法としてのシャーリア」(国際商事法務46巻9号)を公表した。そして,本研究の主軸の外国扶養裁判の承認執行を巡っては「Payments in Foreign Currency and Exchange Rate Fluctuations: From the Perspective of East Asian Countries」(富大経済論集64巻2号),「英国で下された面会交流費用に関する定期金支払判決の承認執行(ジュリスト1529号),「外国扶養裁判承認執行制度の現状と課題」(国際私法年報20号)を公表した。 また,個別報告として,2018年9月に台湾の銘傳大学の国際シンポジウム(2018兩岸基礎法學與公法法律研究生論壇及國際學者講座 )にて,「日本における人事訴訟法・家事事件手続法の2018年改正について」,同月に国際取引法学会・中間報告会(明治学院大学)にて,「執行決定手続の現状と展望」,2018年10月渉外判例研究会において「英国で下された面会交流に関する定期金支払判決の承認執行」と題するものを行った。後二者の報告原稿につき加筆修正したものは,前記の通り年度内に公表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「簡易化」を果たす可能性の一つとなる執行決定の導入可能性について,二年目での一応の結論を計画していたが,2本の論文で分析した結果,立法論的提言を行うことができた。また,二年目,三年目は,英語論文での成果公表を計画していたが,1本関連するものを公表できた。そのほか,判例評釈を通じて,本研究成果の一部が実務において応用可能であることが示された。以上から,このような評価とする。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の対象となる扶養裁判の承認執行については,研究途上であった平成30年4月に新法が成立し,平成31年4月1日より施行されることとなった。そこでは,本研究開始時には予定していなかった文言が条文に組み込まれており,その検討を追加的に行う必要がある。この点,Japanese Yearbook of International Law誌に,英語にてその解説及び批判的考察をする機会が与えられたため,最終年度はこの論文につき査読を経て公表することを一つの目的に据える。そこでは,今年度の簡易化の検討で現れた,執行決定の導入やその他の手段についても,より高次の視点で検討を加えることとし,翻って外国扶養裁判の承認執行制度のあり方につき方策を提示したい。
|
Causes of Carryover |
次年度,研究課題に係る複数の論文につき,英文校正関連費用を支出することとしたため,本年度より使用額を持ち越すこととした。
|
Research Products
(9 results)