2017 Fiscal Year Research-status Report
Staudinger反応による高歪み活性種生成を鍵とした新規クリック反応の開発
Project/Area Number |
17K17749
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
高山 亜紀 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (40778586)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ベンゾシクロブテン / 生体直交型反応 / Staudinger反応 / アジド / Diels-Alder反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,歪みエネルギーを利用した新たな生体直交型反応の開発を目的として,ベンゾシクロブテンの四員環開裂を鍵とした反応開発を行った。ベンゾシクロブテンの四員環開裂に要する反応温度は,ベンジル位の置換基によって大きく異なることが知られている。今回,イミノホスホラン置換基が室温程度の非加熱条件下での四員環開裂を惹起するという仮説のもと,Staudinger反応をトリガーとした2成分連結反応を計画し以下の検討を行った。 (i) 初期検討として基質調整法の確立,反応の進行の有無に関して調査した。その結果,40%程度の収率ではあるものの期待通り所望の生成物が得られ,望みの反応が進行することが分かった。 (ii) 反応溶媒と温度に関する詳細な条件検討を行った。その結果,水添加条件でも所望の反応が進行するものの,水を溶媒量用いた場合,望まない副反応(開環したベンゾシクロブテンと水との反応)が優先して進行することが分かり,クリック反応への応用という点で課題が生じた。一方,温度に関しては,期待通り室温20℃にて反応が進行することが分かった。 (iii) (i)において,企図した反応が含水条件下進行すると分かったので,その反応機構の詳細について調査した。本反応では,“室温でイミノホスホラン置換型ベンゾシクロブテンの四員環が開裂する”という新規知見が示唆されたため,その事実を調査すべく,実験系を立ち上げた。検討の末,(i)より単純な系において,反応機構の詳細に関する実験科学的な証明を行うことができた。 (iv) (ii)で得られた反応機構に関する知見をもとに,より効果的に反応が進行するような新たな基質を現在調製している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基質調製について:当初計画していたC-Hアジド化による調製法は,基質一般性に乏しいと判明したため,ベンゾシクロブテノンを中間体としたより確実性の高い基質調製法へと早期段階で計画の変更を行った。その結果,基質の量的供給が可能となり,研究全体のスピードアップへと繋がった。 計画していた反応が,中程度の収率ながらも水添加の溶媒中で進行するということが分かった。反応溶媒の水の割合が増えることで水との副反応が進行するという問題が生じたものの,反応機構の詳細な解析を同時に行うことで,副反応に関して,3連続反応のどの段階が問題であるか明らかにすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本反応は,「Staudinger反応,四員環開裂,分子内Diels-Alder反応」の3連続反応が順次進行することで,最終生成物が得られてくる。反応機構解析にて,ホスフィンの嵩高さが反応速度に大きく影響すること,3連続反応の最終段階が遅いと,水との副反応が進行するということが示されている。したがって,①1段階目のStaudinger反応を速めること②3段階目のDiels-Alder反応の進行を促すことを主眼において検討をすすめる。具体的には,現在,反応検討が完了している2つの基質(アジド置換型ベンゾシクロブテン,ホスフィン)をレファレンスとして,構造を変えた種々のベンゾシクロブテン,ホスフィンに関して反応の検討を行う。
|
Research Products
(3 results)