2017 Fiscal Year Research-status Report
文理解における「予測」の働き:認知能力の個人差と母語・非母語の差異に注目した研究
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17K17755
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安永 大地 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (00707979)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 文理解 / 関係節 / 処理負荷 / 予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
文理解研究で注目されている処理の仕組みの1つに「予測」がある。これは時間軸上で高速に展開される文理解処理の各時点で、その後にどのような要素が続くか、全体がどのような言語構造体となるかを先読みするという仕組みである。近年の文理解研究において、この「予測」が原因で文理解処理にかかる負荷の大小が変化するという報告が提出されており、文理解処理における「予測」の働きを解明することは、人間の言語理解モデルの精緻化には不可欠である。 初年度は2つの成果を得ることができた。1つ目は、日本語母語話者に対する実験の成果である。日本語の主語関係節と目的語関係節の処理負荷の大小について、数量詞を含む関係節の場合に、その負荷が逆転することがあるという報告がこれまでにあったが、このような逆転現象が生じる原因として、関係節主要部名詞が入力されるより前の語連続の意味的妥当性と格助詞の種類が重要な情報源となっているということをこれまでの研究(Kahraman et al.,2014; Yasunaga, 2016など)とは異なる実験で示すことができた。このような逆転現象が安定的に確認されるということは今後の研究計画にとって非常に有効な成果である。 2つ目の研究成果は、研究環境の構築に関わることである。本研究計画では2年度目以降に視線計測法による読文時間計測実験を計画しているが、この実験を実施するための環境を限られた予算で構築する必要があった。産業用高速カメラと心理実験プログラムを連携させることで、十分な精度を有する視線計測システムを構築できた。これにより、次年度以降の研究計画をスムーズに進めることができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の予定通りに、母語話者に対する実験で、安定的な結果を得ることができる実験刺激の項目を作ることができた。これを利用することで、学習者に対する実験を行うことで、本研究計画の目標達成に近づくことができる。また、視線計測実験の環境構築が順調に進んだので、文だけでなく、文章の読解実験を行うことができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
視線計測実験の環境を比較的安価に構築できることがわかったので、その方法について他の研究者と情報共有をするため、手続きの公開等を早く進める必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
実験の実施にかかるアルバイトの雇用が予定よりも少なかったため。残額は次年度以降のアルバイト雇用にあてる予定である。
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Research Products
(8 results)